【最新版】5分でわかる人材紹介事業(有料職業紹介)免許取得マニュアル

求職者と企業をつなぐ人材紹介事業は、市場拡大を続けています。

人材紹介業は、採用支援した人材の年収が高いほど売上が大きくなるビジネスモデルで、粗利率が高く、設備投資が低いことから、多くの人が開業に興味をもっています。

circus株式会社の調査によると、人材紹介事業者の約3分の1が「免許取得のための書類作成」が大変だったと答えており、事業開始時は入念に免許申請について確認と準備が必要と言えます。

今回は、人材紹介事業のビジネスモデルと、事業開始の基準や申請方法、申請の流れを解説します。

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人材紹介事業(有料職業紹介事業)とは?

人材紹介事業とは、国から許可された事業者のみが行うことのできる、人材あっせん事業を指します。

職業紹介事業の中でも紹介先企業から手数料収入を得る形態を、有料職業紹介と呼んでいます。

人材紹介事業の免許取得の基礎知識として、まずは人材紹介事業の成り立ちや定義、人材派遣業との違いを確認していきましょう。

人材紹介がうまくいく様子

人材紹介事業(有料職業紹介事業)とは?

人材紹介事業とは、仕事探しをしている求職者と人材を募集している企業を、人材紹介会社があっせんして雇用関係の成立をうながすビジネスのことです。
職業紹介事業の仕組み

正式名称は「職業紹介事業」ですが、一般的には人材紹介や転職エージェントと呼ぶことが多いです。

事業の流れとしては、求職者が直接企業に応募する代わりに、人材紹介会社※1に応募の意思を伝えます。

そして、人材紹介会社から募集企業※2に求職者の情報や応募の意思が伝えられ、面接スケジュール調整などを行います。

最終的に、求職者と募集企業が雇用契約を結び、人材紹介会社は募集企業から紹介手数料として入社者の理論年収30~35%を受け取ります。

なお、日本で人材あっせんの事業を行う場合は、事業者ごとに国から有料職業紹介事業免許をもらう必要があります。

※1 人材紹介会社とは…上記図の「職業紹介事業者」を指します。

※2 募集企業とは…法令上、「求人者」と表現されます。

有料職業紹介と無料職業紹介の違い

人材紹介には有料職業紹介と無料職業紹介の2種類があります。

両者の違いは次のとおりです。

       有料職業紹介             無料職業紹介
費用・営利目的で運営OK
・紹介した企業から手数料や報酬をもらえる
営利目的かどうかにかかわらず、手数料や報酬は受けない
取扱える職業港湾運送業務に就く職業、建設業務に就く職業は禁止次の3つは届出が必要
①学校などが、学生生徒を対象にして行うもの②農協、商工会議所、商工会などの特別の法律により設立された法人が、構成員を対象にして行うもの③地方公共団体が、自らの施策に関する業務に附帯して行うもの
実施できる期間新規の許可で3年、更新後は5年有効期限は5年
その他民間企業や個人事業者が運営主体となることが多い地方公共団体は、厚生労働大臣に通知すれば無料職業紹介事業を行える

なお、有料職業紹介と無料職業紹介以外では、公共職業安定所(ハローワーク)による求人募集も代表的です。

これら3つの仕組みは、職業安定法で細かいルールが定められています。

参考:厚生労働省『職業紹介事業の概要

人材派遣事業(労働者派遣事業)との違い

日本での人材の需要調整システムの代表的なものとして、人材派遣事業(労働者派遣事業)があります。

労働者派遣事業の仕組み

職業紹介事業は、職業安定法という法律でルールが定められていますが、労働者派遣事業は労働者派遣法という独自のルールで細かく規定を設けています。

人材紹介と人材派遣の事業を同時に立ち上げようと考える人もいますが、両者には制度面・雇用関係などが大きく異なるので注意が必要です。

主な違いは次の表で確認しておきましょう。

       人材紹介(職業紹介)  人材派遣(労働者派遣)
ビジネスモデル人材紹介会社が、募集企業と求職者の雇用成立のあっせんを行う人材派遣会社(派遣元事業主)が派遣先と労働者派遣契約を結び、派遣スタッフを派遣先に送る
派遣先は派遣スタッフに指揮命令を行う
雇用関係紹介先の募集企業と、求職者のあいだで雇用契約が結ばれる人材派遣会社と求職者が雇用契約を結ぶ
費用成果報酬型
紹介した求職者の理論年収30~35%を、紹介先企業から徴収するのが一般的
稼働課金型
派遣スタッフの時給を設定し、派遣手数料を上乗せして派遣先企業に請求するのが一般的

人材紹介事業のビジネスモデル上の強み

人材派遣事業では、派遣スタッフの募集から雇用契約手続き、派遣先での勤務状況の把握などの付随業務が発生します。

また、派遣元となる人材派遣会社、労働力となる派遣スタッフ、勤務先となる派遣先企業の3者間で、良好な関係性を保つことが難しい事業といえるでしょう。

一方、人材紹介は求職者が入社した後は手離れが良く、売り切り型のビジネスモデルとなっています。この手離れの良さが、人材紹介事業のビジネスモデル上の強みといえます。

ただし人材紹介事業は、1回の紹介決定で動く金額が大きいうえに、求職者を集めてから紹介先企業に入社が決まるまでに1か月~3か月と長い時間を要します。

そのため、売上が短期間で確保しづらくリスクがともなう点には注意が必要です。

とはいえ、労働人口が右肩下がりとなっている日本では、どの企業も人手不足に悩まされています。

人材紹介事業の注意点を意識し事業計画を立て、しっかり仕組み化していけば、将来性のあるビジネスモデルといえるでしょう。

人材紹介(有料職業紹介)免許の許可要件

厚生労働省イメージ

続いて、有料職業紹介の免許を取得する要件を有料職業紹介事業許可基準に沿って確認していきましょう。

①財産、②個人情報保護、③職業紹介責任者、④オフィスの4つの基準にわけて、それぞれポイントを解説していきます。

1:財産に関する基準

有料職業紹介免許を取得するには、次の財産の基準をどちらも満たさなくてはなりません。

【1】基準資産額500万円

基準資産額とは、資産の総額から負債の総額を引いた金額を指します。

事業所が複数ある場合は、「有料職業紹介事業を行おうとする事業所数×500万円」以上の額が必要です。

【2】事業資金が150万円

自己名義の現金・預貯金の額が、150万円以上必要です。

事業所が複数ある場合は、「(有料職業紹介事業を行おうとする事業所数ー1)×60万円」以上の額が必要になります。

2:個人情報保護に関する基準

有料職業紹介事業では、多くの求職者の個人情報を扱うため、個人情報を管理する体制に関する要件が細かく規定されています。

ここでは、代表的な基準を抜粋してご紹介します。

【1】個人情報の管理体制の要件
・求職者などの個人情報をあつかう人は誰か、社内で基準を明確にする
・業務上で知った個人情報を、他の目的で使用しない・漏らさない
・本人から求められた場合の、個人情報の開示または定性の取扱い
・個人情報の取扱いに関する、苦情処理の体制整備
・個人情報適性管理規定の遵守
・個人情報の開示や訂正を求めた本人に対する不利益取扱いの禁止
・事業に必要な範囲内での情報収集を行う(人種、民族、社会的身分や思想信条、労働組合加入状況、家族の職業や収入、容姿やスリーサイズ、人生観など、社会的差別の原因となるおそれのある事項は、原則として収集できない) など

【2】個人情報管理の措置に関する要件
・個人情報の紛失、改ざん防止の措置を講じること
・事業所内の関係のない人が、個人情報にアクセスできないようにすること
・職業紹介に不要な個人情報は破棄、削除すること など

個人情報に関する規定は多いため、必ず次の資料の14ページ目以降を参照ください。

参考:厚生労働省

申請、届出の手続き等

3:職業紹介責任者に関する基準

職業紹介事業の業務を適性に行えるよう、代表者や役員、職業紹介責任者にも基準が設けられています。

【1】代表者および役員が、欠格事由などに該当しないこと

代表者および役員に対する規定が9項目決められています。

【2】職業紹介事業の責任者と同じく、欠格事由などに該当しないこと

上記ふたつの詳細は、参考資料の16ページ目を参照ください。

参考:厚生労働省『申請、届出の手続き等

4:オフィスに関する基準

有料職業紹介事業を行うためには、オフィスの基準も満たさなくてはなりません。

【1】事業所の位置

風俗事業者が集まるエリアなどで有料職業紹介事業を行うのはNGです。

【2】プライバシーを保護しながら求職者の対応ができること

・個室の設置またはパーティションなどで区切ること

・会議スペースをレンタルするなど、他の求職者と同じ部屋にならずに対面で職業紹介を行えるようにする

【3】事業所名

職業安定機関や、公的な機関と間違えられるような名前(通称含む)をつけてはいけません。

なお、事業所の面積が20㎡以上という条件が必須でしたが、2017年より撤廃となりました。

しかし当分のあいだは、面積基準も認められる場合があるので、労働局に確認すると良いでしょう。

また、常にオンラインで職業紹介事業を行う予定の事業者が、対面での運営をあとから行う場合は別途、許可条件が必要になります。

オンラインでの事業展開を検討している場合は、最寄りの労働局などに問い合わせをおすすめします。

参考:厚生労働省『申請、届出の手続き等

人材紹介(有料職業紹介)事業許可申請の流れ

申請書

次に、人材紹介事業の許可申請の流れを見ていきましょう。

事業許可申請の流れ

ステップ1:事業計画書の作成・労働局への相談

人材紹介事業をはじめる際は、まず事業計画書を作成します。

どのような業界・職種の求職者を支援するのか、何人で立ち上げ、何を強みとして競合と差別化するのかなど計画に落とし込み、必要に応じて管轄の労働局に相談をしましょう。

ステップ2:資金や個人情報の基準をクリアする

先ほどご紹介した基準を満たすよう確認しながら、オフィスや資金の準備を進めます。

ステップ3:職業紹介責任者講習の受講・申請書類の準備

事業を行う環境が整ったら、「職業紹介責任者講習」を受講し、申請書類を準備して申請をしましょう。

ステップ4:申請・差し戻し対応

申請後、2~3か月のあいだに事業計画および申請内容の調査が行われ、厚生労働省から許可が下りれば「許可証」を受領します。

申請から許可取得までにかかる期間

有料職業紹介事業の申請から許可取得までには、おおよそ2~3か月間かかります。

細かい作業ごとの所要時間は、次の表を目安にしてみてください。

許可基準の要件を確認1日
責任者講習の受講1日(予約してから受講までの日数は含まない)
申請書の作成2~3時間
8項目の添付書類の準備1日~1週間(書類取り寄せにかかる時間を想定)
労働局の説明会参加1日
申請手続き半日
事務所の検査対応申請後、1週間
申請後、許可証の交付2~3か月(混雑で延長の可能性あり)

どんなに遅くとも、事業を開始する2か月前には申請書類をそろえて許可申請を行いましょう。

なお、「職業紹介責任者講習」を受講した職業紹介責任者は50人に1人置くことが、申請の必須条件となります。早めに講習スケジュールを確認して受講してください。

講習の詳細は、次のサイトで確認できます。

公益財団法人 全国民営職業紹介事業協会

http://www.minshokyo.or.jp/course/

人材紹介(有料職業紹介)許可申請の必要書類

事務所のデスク

有料職業紹介の許可申請に必要な書類をご紹介します。

<許可申請に必要な書類一覧>

  必要な添付書類法人 個人 
共有・有料職業紹介事業許可申請書 3部
・有料職業紹介事業計画書 3部
・届出制手数料届出書(上限制手数料による場合には提出は不要)3部
・次の①~⑧の添付書類 2部
法人に関する書類
 (法人に関する書類) ・定款又は寄附行為・法人の登記事項証明書 (労働組合の場合、労働組合等に関する書類) ・労働組合等であることを証明する書類・組合規約 ・組合員数、組合の組織、上部団体等を明らかにする書類 
(各種学校の場合、各種学校に関する書類)・各種学校であることを証明する書類 ・学校の沿革を明らかにする書類 ・学則・学生、生徒の定員数、現員数、職員数等学校の規模を明らかにする書類 
代表者・役員・職業紹介責任者に関する書類
・住民票の写し・履歴書 ・職業紹介責任者講習受講証明書の写し(職業紹介責任者のみ)
※必要な人のみ・精神の機能の障害に関する医師の診断書・代表者役員の法定代理人の住民票の写し、履歴書及び医師の診断書
資産及び資金に関する書類 
・最近の事業年度における貸借対照表及び損益計算書 ・預貯金の残高証明書等所有している資産の額を証明する書類・所有している資金の額を証明する預貯金の残高証明書・最近の事業年度における確定申告書の写し・最近の事業年度における納税証明書・預貯金の残高証明書等所有している資産の額を証明する書類・所有している資金の額を証明する預貯金の残高証明書・最近の事業年度における確定申告書の写し・最近の事業年度における納税証明書
個人情報の適正管理に関する書類 
業務の運営に関する書類
事業所施設に関する書類 
・建物の登記事項証明書(申請者が所している場合)・建物の賃貸借又は使用貸借契約書(借りている場合)
相手先国に関する書類(国外にわたる職業紹介を行う場合)
・相手先国の関係法令及びその日本語訳 ・相手先国において、国外にわたる職業紹介について事業者の活動が認められていることを証明する書類、および当該書類が外国語で記載されている場合は日本語訳 
取次機関に関する書類(国外にわたる職業紹介を行う場合で、取次機関を利用するときのみ)
・取次機関及び事業者の業務分担について記載した契約書その他事業の運営に関する書類、および日本語訳・相手先国において、当該取次機関の活動が認められている ことを証明する書類および日本語訳 ・取次機関に関する申告書(通達様式第 10 号)

許可申請の書類作成は専門家に依頼できるのか

ここまで読んでみて、人材紹介事業の書類作成や申請手続きを完璧に進める自信がないと感じた人もいるのではないでしょうか。

どうしてもご自身で書類準備や確認、申請が難しければ、許可申請を専門家に依頼するのもおすすめです。

民間の事業者、社会保険労務士などに依頼する場合、費用は5万円~20万円と幅があります。

ご予算にあわせて、一度問い合わせしてみるのも良いでしょう。

人材紹介(有料職業紹介)許可取得に必要な費用

費用について

最後に、有料職業紹介の許可申請~取得に必要な費用をまとめたので、参考にしてみてください。

許可申請にかかる費用

収入印紙による手数料支払いと、登録免許税がかかります。

〇収入印紙
50,000円+18,000円×(有料職業紹介事業を行う事業所数-1)の金額の収入印紙

〇登録免許税
許可1件あたり90,000円を、日本銀行歳入代理店または管轄の税務署で現金支払いをして、領収証書の原本を提出します。

代理申請する場合にかかる費用

有料職業紹介の許可取得の際は、たくさんの書類準備が必要です。

そのため、有料職業紹介事業の許可を代行申請することもできます。

書類作成から申請代行まであわせて5万円程度の費用がかかり、依頼業者によって費用は異なります。

予算にあわせて代理申請を検討するのも良いでしょう。

まとめ

人材紹介事業は、管轄の労働局を通して厚生労働省に許可申請を行ってから初めて運営できる事業です。

事業許可の申請の前に、人材紹介事業を行うための事業基準を満たしたり、所定の書類を準備したりする必要があります。

本記事を参考にしつつ、一つずつ丁寧に準備を進めていきましょう。

なお、人材紹介事業に関する法令は改正を繰り返しているので、事業準備の途中も最寄りの労働局とコミュニケーションをとって、最新情報の確認をすると安心です。

いきなり免許取得に急ぐのではなく、東京労働局で実施されている新規事業者向けの説明会に参加するのも良いでしょう。

免許取得までの動きについては、以下の資料が参考になります。

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