人材紹介の起業準備のなかでも、事務所選びには慎重な検討が必要です。どんな事務所が適切なのか、選び方の基準が分からずお困りではないでしょうか。
本記事では、人材紹介を起業するときの事務所の条件や、レンタルオフィスの使用基準について紹介します。人材紹介の事務所の選び方や注意点を理解し、最適な事務所選びを実現させましょう。
人材紹介の起業方法、免許取得の流れを知りたい人は、以下の記事もあわせてご覧ください。
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有料職業紹介事業の「事務所要件」とは
人材紹介の事務所を設置する際は、免許を取得するために満たさなくてはならない事務所の基準をクリアしなくてはなりません。事務所の位置、構造、設備、面積などの項目が、人材紹介業を行う上で適切かどうか判断されます。
厚生労働省サイト内の職業紹介事業パンフレット―許可・更新等マニュアル―から閲覧できる、令和5年度10月1日改訂『申請、届出の手続き等』をもとに解説します。
※手続を進める際は、必ず厚生労働省や労働局サイトで公開されている最新の情報を確認してください。
位置が適切である
事務所要件の一つ目は、事務所の位置が適切であることです。具体的には、風営適正化法で規制する風俗営業や性風俗関連特殊営業等が密集するような場所で、人材紹介業を運営してはいけないと示されています。
事業所として適切である
二つ目の要件は、「事業所として適切である」の基準を満たすことです。人材紹介を行う事業所として適切かどうかは、次の二つの観点で判断をします。
- プライバシーを保護しながら求職者と企業の対応ができること
- 事業所名(愛称や通称といった呼び名を含む)が公的な職業紹介機関と誤認されないこと
順に詳しく解説していきます。
プライバシーを保護しながら求職者と企業の対応ができるとは
人材紹介事業では、求職者の名前や住所、連絡先、勤め先といった個人情報を多く扱います。また、企業の採用情報や事業に関する機密情報も取得することから、プライバシー保護ができる環境が求められるのです。
厚生労働省では、個室の設置かパーテーションで部屋を区切る方法を示していますが、次の1または2を満たすこと。または、当分の間は3の面積基準を満たすことも認められます。
- 予約制、近隣の貸部屋の確保等により、他の求職者や企業と同室にならずに、対面の人材紹介ができるようにする
- 専らインターネットを利用することにより、オンラインの人材紹介を行う
- 事業所の面積がおおむね 20㎡以上であること
基本の構造基準:個室の設置やパーテーションでの区分
厚生労働省の『申請、届出の手続き等』によると、基本的には個室を設置したり、音漏れがしないようにパーテーションで部屋を区切ったりして、複数の求職者が同室にならないような構造を設ける必要があります。また、個人情報を取り扱う社員の範囲も明確にしておかなければなりません。
ただし、複数の個室があって主要駅からアクセスの良い事務所となると、事務所の賃貸コストが高額になるケースが多いでしょう。そこで検討したいのが、その他の要件基準です。
例外①予約制・貸し部屋の確保
基本の構造基準である「個室の設置」「パーテーションでの区分」を満たすために、予約制のレンタルスペース・貸し部屋を活用する方法があります。予約制の会議室、貸し部屋を使って求職者や企業との面談を行えば、プライバシー保護の観点では問題ないと判断されます。
なお、この基準はあくまでも対面で人材紹介業を行うことが前提です。
例外②専らインターネットを利用してオンラインの人材紹介を行う
完全オンライン対応で人材紹介業を行う方法も、プライバシーを保護する要件として検討可能です。「専ら」と記載があるため、オンラインと対面を併用することは難しい点に注意してください。
例外③事務所面積20 ㎡以上を満たす
従来は事務所面積20㎡以上が必須要件となっていましたが、現在は任意条件となっています。先に述べた①②いずれかの方法で、プライバシーを保護できていれば問題ありません。
なお、当分の間は、事務所面積が20㎡以上であることも、要件を満たす基準として認められます。プライバシーを保護する観点で、①~③の中から対処していけばよいでしょう。
オフィスの個室やキャビネットのセキュリティ対策を行う
人材紹介の事務所の条件として言及はないものの、オフィス内の個室やキャビネット等のセキュリティ対策も忘れてはいけません。同資料の15ページを参照すると、「個人情報の管理体制に関する要件」は必ず確認が必要です。
例えば、求職者から収集した個人情報(履歴書や職務経歴書、面談データなど)を紙で印刷紙て保管する場合は、必ず鍵付きキャビネットに収納しましょう。事務所内で誰が個人情報を扱うのか明確にして、不必要に個人情報を保持するエリアに社員が立ち入らないように、適切な措置を講じなければなりません。
レンタルオフィスを使用するメリット
人材紹介の事務所要件が従来よりも緩和されたことで、レンタルオフィスを活用する企業も増えてきました。多くのレンタルオフィスは主要駅からのアクセスが良く、清潔感があり、セキュリティやデザインに優れたスペースを低コストで提供しているというメリットがあります。
人材紹介用の賃貸物件を一から探すよりも、人材紹介事業を行えるレンタルオフィスを探したほうがスムーズな場合もあります。次の章で紹介する注意点をおさえながら、レンタルオフィスの利用を検討してみてください。
人材紹介をレンタルオフィスで行うときの注意点
2023年の法令に従えば、レンタルオフィスで人材紹介業を行うことは可能です。ただし、次に紹介する4つの項目を満たしているか、事前に確認が必要となります。
共有ラウンジ・個室の有無
まず、レンタルオフィス内に個室があるか、パーテーションで区切られて個人情報を保護できるスペースがあるか確認をしましょう。多くのレンタルオフィスでは、複数名で自由に利用できる共有ラウンジと、個室・半個室のブース席が設けられています。
レンタルオフィスによっては、個室はあるものの常に予約が入っていて使えない場合もあります。また、パーテーションで区切られていても、音漏れが激しく、個人情報を扱うには適さないケースも見受けられます。
フリーデスクのみ契約することは認められていないため、レンタルオフィス内を見学して、個人情報を保護できるスペースが確保できるか必ずチェックしましょう。
立地・アクセス
レンタルオフィスであっても、「事務所の位置が適切か」という基準を満たさなくてはなりません。周囲に風俗街があるのは論外です。求職者や企業が来訪する可能性があるなら、駅からアクセスしやすいか、分かりやすい場所にあるかなど、相手目線でチェックをしましょう。
賃貸物件では高額になりがちな人気なターミナル駅の物件でも、レンタルオフィスであればコストをおさえて利用できるケースが多いです。複数のレンタルオフィスを比較検討してみてください。
清潔感や通信環境
レンタルオフィスの清潔感や通信環境、備品の使い勝手の良さなども大切な確認ポイントです。定期的に清掃されているか、個室やその他施設も含めてチェックしましょう。
また、オンラインミーティングを行うときにWi-Fi環境が整っているかも確認してみてください。
混雑具合や騒音の有無
レンタルオフィスは不特定多数の人が出入りをするため、どの時間帯に混雑するか事前確認が大切です。特定の曜日、時間帯に混雑していて個室が予約できなかったり、騒音が気になったりするかもしれません。
その他にも、BGMの大きさや空調、周囲の電話やオンラインミーティングの声が響くかどうかも、細かく確認できると安心です。
居住用マンション・自宅を事務所として使いたい場合
レンタルオフィスではなく、居住用のマンションを事務所として利用することもできます。ただし、賃貸契約の際に、事務所として使用する内容を契約書に盛り込まなくてはなりません。
自宅を事務所と兼用することも認められています。自宅兼事務所にする場合は、事務所エリアおよび個人情報を扱う面談スペースを、完全に区別する必要があります。自宅の間取りによっては免許取得が難しい可能性があるため、個別に労働局へ相談するとよいでしょう。
事務所要件をしっかり確認して起業準備を進めよう
人材紹介の事務所は、事務所の位置や構造、設備など複数の要件を満たさなくてはなりません。個人情報を扱う事業者として、適切な事務所選びを行いましょう。
また、事務所の面積に関する条件が緩和されて、レンタルオフィスで開業を検討する人も増えています。要件緩和で新規参入者が増加傾向となっていますが、免許取得の手続きは確認項目が多いため、抜け漏れがないよう慎重に進めていきましょう。
免許取得については、以下の記事を参考にしてください。
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