「人材紹介業は個人事業主でも始められると聞いたけど本当かな?」
「法人開業と個人事業主で人材紹介を行う場合、どのような違いがあるんだろう」と気になっている人も少なくないでしょう。
本記事では、個人事業主で人材紹介を行う際に知っておきたい注意点、準備事項や、個人事業主で起業する際のメリット・デメリットなどをまとめます。
人材紹介は個人事業主でも始められる
結論として、個人事業主でも人材紹介は起業できます。人材紹介は国に認められた事業者のみが運営できる免許制の事業で、求職者を企業に紹介して手数料収入を得るビジネスモデルです。
法人を持たない個人でも、きちんと要件を満たせば免許取得は可能ですが、個人事業主ならではの注意点もあります。次の章で確認していきましょう。
個人事業主で開業する際の注意点
個人事業主で人材紹介業を始める際は、資金の要件と、将来的な法人化の2点に注目して検討するのがおすすめです。それぞれ詳しく解説します。
1.資産要件
人材紹介免許を取得する際に、必ず満たさなくてはならない資産要件は以下の2つです。
(1) 資産(繰延資産及び営業権を除く。)の総額から負債の総額を控除した額(以下「基準資産額」という。)が500万円に申請者が有料職業紹介事業を行おうとする事業所の数を乗じて得た額以上であること。
(2) 事業資金として自己名義の現金・預貯金の額が、150万円に申請者が有料職業紹介事業を行おうとする事業所の数から1を減じた数に60万円を乗じた額を加えて得た額以上となること。
この資産要件は、法人と個人ともに500万円が条件となっています。自己名義の現金、預金額が150万円以上となっているので、プライベートで購入した家や車のローンなどが負債とみなされる点に注意が必要です。
法人格で免許申請する際は、個人と法人の資産を分けて考えるので、プライベートで負債を抱えていても計算には含みません。
2.個人事業から法人へ免許の引継ぎ不可
個人事業主として免許取得をすると、法人成りした際に免許を引き継ぐことができない点にも注意が必要です。
個人事業主を選ぶ人の中には、事業が黒字化して軌道に乗ったら法人化しようと考える人も少なくありません。
しかし残念ながら、途中で法人成りして人材紹介事業を続けたい場合、設立した法人名義で1から免許申請を行わなくてはなりません。資産要件や書類の準備、申請に数か月間かかることをふまえて、個人か法人かを選択しましょう。
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個人事業主で人材紹介を始めるメリット・デメリットは?
個人事業主で人材紹介を始めるメリットとデメリットを整理してみましょう。
メリット | デメリット | |
個人事業主 | 開業手続きや会計処理が簡単 税務調査のターゲットにされにくい | 社会的信用力がないため、取引先が限定される法人成りしたときに免許を再取得節税がしづらい加入できる社会保険が少ない免許取得時の資産要件はプライベートの負債が含まれる |
法人 | 社会的信用力がある節税しやすい人材紹介免許の取得は1回で良い 免許取得時の資産要件はプライベートと分けて考える | 開業手続きや会計処理が複雑、行政書士や税理士など専門家への費用も発生税務調査の可能性は個人より高い |
個人事業主で起業するメリットとしては、法人に比べて開業手続きが簡単なこと、事業開始後の会計処理も比較的易しいこと、税務調査の可能性が法人より低いことなどが挙げられます。
一方デメリットとしては、法人よりも社会的信用が低いため金融機関の利用が制限される懸念があります。求職者や企業の中には、個人事業主と取引をするのはリスクがあるから法人の人材紹介を使おうと考える人もいます。
また、個人事業主は無限責任となるため、事業が失敗した際の負債をすべて負うリスクもあります。そのほか、節税方法も法人には劣ることもデメリットと言えるでしょう。
特別な事情がなければ法人がおすすめ
ここまで解説した注意点やメリット・デメリットを考慮すると、よほどの事情がない限り、人材紹介は法人格で開業するほうが良いでしょう。
法人で人材紹介を始める場合は、人材紹介免許の取得費用とは別に法人化のための諸費用がかかります。法人を作るために、いくら準備しておけばいいか解説します。
法人化にかかる費用
定款用収入印紙に電子認証を使った場合、法人化の登記にかかる費用として、株式会社は約21万円、合同会社は約6万円が相場です。登記費用とあわせて資本金500万円のほか、法人設立手続きのコンサルや代行業者を利用する人は別途資金が必要です。
人材紹介は採用決定から手数料振込までタイムラグがあります。事業開始後すぐに手数料収入を手にできるわけではないので、3か月ないし半年程度は収入がないまま事業運営費がかかることに留意しましょう。
株式会社 | 合同会社 | |
定款用収入印紙 | 4万円(電子認証は0円) | 4万円(電子認証は0円) |
定款の認証手数料 | 3万~5万円 | 0円 |
定款の謄本手数料 | 約2000円 | 0円 |
登録免許税 | 15万円 | 6万円 |
資本金 | 500万円以上 | 500万円以上 |
専門家や設立代行業者への依頼費 | 数千円~数万円 | 数千円~数万円 |
人材紹介の開業方法
最後に、個人事業主として人材紹介を開業するまでの流れを改めて説明します。
事業計画書を作成する
個人開業の場合でも、法人と同じように事業計画書を作成します。事業計画書は免許申請の際に提出が義務付けられています。
そもそも人材紹介の競合は全国に約3万事業者いるため、何も考えずに無計画で開始するのは危険です。
1人で対応できる面談数や企業との商談数は限りがあり、毎月継続的に採用決定を出すのは至難の業です。事業開始してから手数料収入が安定するまでの資金繰りもあわせて、念入りに計画を立てましょう。
資産要件を満たす
個人事業主で人材紹介を行う場合は、資産要件の計算に個人の負債も含みます。家や車のローンなど大きい買い物予定はないか、ご自身のライフプランと照らし合わせて資産計画をしてください。
資産要件の500万円ぴったり用意するのではなく、免許取得までの生活費や、開業後の事業運営費も鑑みて資金準備を行いましょう。
開業届を出す
個人事業主として事業を開始する際は、最寄りの税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。提出期限は事業開始日から1か月以内で、「青色申告承認申請書」とあわせて提出するのが一般的です。
会社員を辞めて個人開業を考えている人は、慌てて離職するのではなく、事業計画や資産要件など準備が整ったタイミングで開業するようにしましょう。
申請書類の準備
人材紹介の免許申請書類を準備します。法人は定款や法人の登記事項証明書の提出をしますが、それ以外の書類は個人・法人ともにほぼ同じです。
準備する書類数が多いので、慣れない書類仕事には手間も時間もかかります。必要に応じて士業や経営コンサルタントなど専門家に依頼をしてください。
職業紹介責任者講習を受講
個人事業主の事業主個人が人材紹介の責任者となります。厚生労働省サイトで実施機関を選び、職業紹介責任者講習を受講しましょう。
厚生労働省 職業紹介責任者講習の実施機関について
オフィスや人員の確保
個人事業主でも、面接の日程調整や求人票作成といった事務作業をアウトソースする場合もあるでしょう。人材募集費用や、スタッフに支払う報酬なども想定して事業計画を立てておくと安心です。
求職者や企業と面談する際は、個人情報管理のために個室などを確保する規則となっているので、申請書を提出する前には事務所やレンタルオフィスなどの確保も行っておきましょう。
なお、人材を雇用せずに業務委託契約を結んで外注する場合、人材紹介免許の※名義貸しになる可能性も高いので注意してください。
※名義貸しの禁止:名義の貸与や借用は認められない
人材紹介会社の運営時に注意しておきたいトラブルに関しては、以下で詳しく紹介しています。
人材紹介で手数料が払われない!中抜きや未払いトラブル事例と対処法
免許なしの人材紹介はあり? リファラル採用・単発紹介・副業など事例ごとに違法性を解説
免許を取得
免許の申請書類を最寄りの労働局に提出してから、認可証を受領するまで約2〜3か月かかります。
万が一、不許可通知書が届いた場合は事業計画の見直しや書類の再提出が必要となるので、余裕をもったスケジューリングをしておきましょう。
まとめ
人材紹介は個人事業主でも免許取得が可能ですが、資産要件にプライベートの負債が含まれる点や、免許を法人に引き継ぐ事ができない点を覚えておきましょう。どうしても法人を作れないなど、よほどの事情がない限りは法人格で起業することをおすすめします。
なお、個人と法人のどちらを選んだとしても、開業後の求人開拓は必須です。
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