リファラル採用・単発紹介・副業など
事例ごとに違法性を解説
ご存じのとおり、日本では国の許可なく「人を企業にあっせんする行為」は原則として禁止されています。しかし、どのようなケースが無免許に該当するのか、線引きが分かりにくいものです。
「知人を企業に紹介したら謝礼をもらってしまった」「人材募集している企業に人を紹介したけれど、1回きりだし手数料をもらってないから問題ないよね?」など、自身の行為が免許なしの人材紹介として違法かどうかの判断は難しいでしょう。
本記事では複数のケーススタディを取り上げて、免許なし違反行為かどうか解説していきます。
また、きちんと免許を取得して人材紹介業を行いたい方に向けて、副業でも免許取得が可能な理由や、副業で人材紹介業をスムーズに立ち上げる方法もあわせてご紹介します。
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免許なしに人材紹介で手数料をもらうのはNG
はじめに、職業安定法の条文をもとに人材紹介の基本事項を解説します。
第三十条 有料の職業紹介事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。
・第三十二条の三 第三十条第一項の許可を受けた者(以下「有料職業紹介事業者」という。)は、次に掲げる場合を除き、職業紹介に関し、いかなる名義でも、実費その他の手数料又は報酬を受けてはならない。
・第四条 この法律において「職業紹介」とは、求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあつせんすることをいう。
上記の条文にある通り、原則として厚生労働大臣の許可を受けた事業者のみ人材紹介業を行うことができます。人材紹介業には有料(何らかの手数料を徴収するもの)と無料の2種類がありますが、有料・無料にかかわらず国の許可が必要です。
有料で行う人材紹介業は、当該法律で定められた手数料以外はどんな理由であれ金銭を受け取ってはいけません。
第三十二条の三で、「次に掲げる場合」とは、以下2つのケースです。
一 職業紹介に通常必要となる経費等を勘案して厚生労働省令で定める種類及び額の手数料を徴収する場合
二 あらかじめ厚生労働大臣に届け出た手数料表(手数料の種類、額その他手数料に関する事項を定めた表をいう。)に基づき手数料を徴収する場合
ほとんどの人材紹介業は二つ目の「届出制手数料」を定めていて、紹介した人材の「理論年収」の35%前後を企業から徴収しています。
そして、無許可の人材紹介を行った場合は1年以上10年以下の懲役、または20万円以上300万円以下の罰金に処する旨が第64条に定められています。
人材紹介の手数料については次の記事で詳しく解説しています。
有料職業紹介の許可が必要な条件とは
職業安定法でルールが決められている「人材紹介(職業紹介)」とは、企業から人材募集の依頼、または求職者から仕事探しの依頼を受けて、両者の間の雇用成立をあっせんすることを指します。
つまり、雇用成立のあっせんではなく、業務委託契約の人材を紹介する行為は、職業紹介にあたらないと解釈ができます。また、ここでいう「あっせん」とは、求人者と求職者との間をとりもって、雇用関係が円滑に成立するように第三者として世話をすることと定義されています。
人材紹介会社が企業から求人票を受け取り、求職者と面談をして求人を紹介して、面接調整など支援するような一連の行為を指すとイメージできるでしょう。
この解釈にもとづくと、「ただ知り合いの名前と連絡先を企業に教えただけ」であれば、両者の間をとりもって円滑に雇用関係が成立するよう世話をしたと言い切れないので、人材紹介にはあたらないと考えられます(ただし実態をもとに判断するので断定はできません)。
このように、一つひとつ言葉の定義を丁寧に確認していくと、本法に抵触するか否か判断できるはずです。次の章では、ケーススタディごとに「免許なし」でいいのか、免許取得が必要なのか解説をしていきます。
ケーススタディ:免許なしで良い事例
まず、免許なしでも問題ない人材紹介の事例を2つご紹介します。
求人マッチングサイト
企業と人材をつなげる事業の代表的なものに、求人マッチングサイト(転職サイト、求人サイト、ダイレクトスカウトサービスなど)があります。結論として、これらの事業は「募集情報等提供事業」に分類され、人材紹介とは別物となり、人材紹介の免許は不要です。
募集情報等提供事業とは、求人サイトなどで企業や求職者の情報提供を行う事業者を指します。情報提供のみで雇用関係成立のあっせんを行わないため、人材紹介業の許可は必要がないのです(ただし一定の条件を満たした特定募集情報等提供事業者は届出制となります)。
某求人サイトが免許なしの人材紹介にあたらないか、国に照会を行った事例もありますが、結論として人材紹介にあたらないと判断されました。
サイト内で求職者が求人検索した際に、その人にあった求人情報を見せるようアルゴリズムを設定している点、求職者と直接連絡は行わない点などから、雇用成立のあっせんではないと解釈されたようです。
リファラル採用
リファラル採用とは、一般に社員が知人に対して自社の求人を紹介する募集活動を指します。リファラル採用に協力した社員に、会社から謝礼金やインセンティブという名目で報酬が支払われるケースがありますが、社員の通常の賃金として支払えば違反行為には該当しません。
なお、その根拠条文は職業安定法の第40条にあります。
第四十条 労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第三十六条第二項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない。
ただし、違法性を問われたときに根拠をもって説明できるよう、リファラル採用とインセンティブに関する取り決めを就業規則や賃金規定に明記し、社員への周知が必要です。
ケーススタディ:免許が必要な事例
続いて、人材紹介の免許が必要となる事例、あるいは免許なしだとリスクが高いケーススタディをご紹介します。
単発で人材紹介をして報酬を受け取る
人材紹介は1回きりなら、「業として行った」ことにならないし違法ではないと解釈することもありそうですが、この考え方は誤りです。
労働基準法では「業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」と第6条に定められていますが、「業として」とは1回きりであっても、反復継続して行う意思があれば違法となります。
ただし、労働基準法や職業安定法に違反しているかどうかは、実態ごとに判断していくため、「法律でこう言っているから絶対に違法だ」「この判例では違法になっているから間違いない」と決めつけて解釈するのは避けたいところです。
1回だけ人材紹介しただけなら違反ではないと安易に考えず、法違反に該当する可能性が高い行為は行わない、または個人で判断ができないときは最寄りの労働局に問い合わせするなど、慎重に対応しましょう。
業務委託に人材紹介の仕事を委託する
人材紹介会社が、免許のないフリーランスや副業会社員などに業務委託で仕事を依頼するケースがありますが、これは「名義貸し」として免許なしの違反行為になる可能性があります。職業安定法の三十二条の十では、自己の名義をもって他人に人材紹介を行わせることを禁止しています。
業務委託で働く人は、労働者ではなく事業者ですから、発注内容によっては人材紹介会社の紹介免許を名義貸ししたとみなされる可能性があります。
しかし、副業解禁や働き方の多様性が重視される昨今では、企業がフリーランスや副業を希望する会社員と、業務委託契約を結ぶケースは増加傾向です。実際に、業務委託のメンバーに人材紹介の営業を任せる場面も散見されます。
実態として複数の事例があるとはいえ、法違反かどうかは別問題です。どうしても業務委託の方に人材紹介業の仕事を任せたい場合は、労働局に確認をとるようにしましょう。
人材紹介業と業務委託の関係については、次の記事で詳しく解説しています。
人材紹介と業務委託の違法性とは?職業安定法の規定・違法のケースを紹介
業務委託の人材を免許なしに紹介する
業務委託で契約を希望する人材を企業に紹介する場合は、雇用成立のあっせんに該当しないので法違反ではありません。しかし業務委託とは言いつつも、実態は労働者と等しい働き方をしている事例では注意が必要です。
繰り返しになりますが、労働法関係で違法性を確認する際は、実態で判断をしていきます。契約上は業務委託と記載があっても、実態の働き方や企業との使用従事関係を総合的に見て労働者と変わらないと認められれば、「労働者を紹介した=職業紹介を行った」とみなされる可能性があるのです。
人材紹介したけど手数料をもらわない
人材紹介をしたけれど、企業から報酬をもらっていないから問題ないと解釈するのは誤りです。冒頭でも述べましたが、有料・無料を問わず免許なしの人材紹介は禁止されているためです。
無料の人材紹介とは、いかなる名義でも手数料や報酬を徴収しない人材紹介のことで、例えば学校法人などが行う雇用あっせんを指します。
無料であっても、大前提として国の許可が必要なので、「報酬や手数料をもらっていないからOK」という理解は誤りなのです。
人材紹介は副業でも免許取得はできる
ここまで、免許なしや名義貸しという違法性の高い事例を複数紹介してきました。法律の抜け道を探して人材紹介を行うのではなく、正しく許可を得て人材紹介を行うことをおすすめします。
例えば、「ITエンジニアの知人が多く、頻繁に転職相談に乗っている」という人であれば、副業として人材紹介業を立ち上げるのも一つの手段でしょう。
次章では、副業で人材紹介業を立ち上げやすくなった背景について、補足的に説明します。
人材紹介が副業で実現できる背景
以前は、人材紹介を立ち上げる際のオフィス条件や継続的な集客が起業の障壁になりがちでしたが、オンライン化が進み、事業立ち上げのハードルが下がってきた印象があります。人材紹介が副業でも実現可能と言える背景を3つ取り上げ、解説します。
1:オンライン面談が主流に
人材紹介といえば、求職者の仕事帰りの時間帯にカフェや自社オフィスで面談を行う方法が主流でした。対面かつ、オフィスを構えたり出先で場所を確保する労力を考えると、なかなか副業では手が出しにくい事業だったと思います。
しかし、コロナ禍でオンライン対応が進み、面談実施のハードルがかなり下がりました。オンライン面談であれば、本業のある人でも場所を移動せずに求職者や企業面談を行えるため、人材紹介を副業で立ち上げる後押しになっていると考えられます。
2:オフィスの要件が緩和
人材紹介を立ち上げる際は一定のオフィス条件が定められていますが、この条件は一部緩和されています。現状はシェアオフィス・レンタルオフィスといったスペースでも、個室またはパーテーションなどで適性な環境を作れるのであれば免許申請が可能です。
オンライン対応かつ、近場のレンタルオフィスで個室をおさえるなどの調整さえできれば、副業で人材紹介業の免許取得も難しくないでしょう。
詳しいオフィス要件や個人での開業方法は、次の記事も参考にしてみてください。
人材紹介で起業!事務所の条件やレンタルオフィスの使用基準とは
3:SNSなどで求職者集客が可能
副業でも人材紹介業の立ち上げが可能な背景の3つ目に、求職者の集客手段が豊富にある点が挙げられます。SNSで転職に関するノウハウを発信して求職者を集める方法や、ココナラのようなスキル販売プラットフォームを利用して「職務経歴書を添削するサービス」「面接対策を行うサービス」などを個人で販売し、求職者を集客する事例が増えています。
転職サイト経由で求職者にスカウトを送り集客したり、Web広告で集める場合は費用がかさみますが、無料のツールを使いこなせば、個人でも集客は可能でしょう。一方、求人を集めるにはcircusAGENTのような求人データベースを活用する方法もあります。
求人データベースについては、次の記事で詳しく解説しています。
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まとめ
今回は、免許なしで人材紹介を行ってしまい、違反行為となる事例を複数紹介しました。知らず知らずのうちに、知人紹介などで法律違反してしまわないよう、正しい知識を身に付けることが大切です。
継続的に人の紹介、あっせん機会が発生する場合は、人材紹介業を起業してみるのも手段です。副業でも人材紹介業の免許申請は可能なので、興味のある人は起業方法を調べてみてください。
なお、事業立ち上げの際は、求人データベースを活用すると効率的に求人を集めることができます。事業運営をスムーズにしていくために、ぜひ活用を検討してください。
立ち上げの際には、様々なツールの見本があると便利です。立ち上げ期で特に必要になる5つのツールを公開しているので、こちらもご確認ください。