人材紹介で起業を考えている人に向けて、人材紹介の市場規模やコロナ後の動向、最新トピックをご紹介します。市場規模やトレンド情報をおさえて、ぜひ起業にお役立てください。
人材紹介の具体的な業務に関しては、以下の記事で詳しく紹介しています。
人材紹介の営業（CA/RA）は激務できつい？CA/RAの仕事内容と営業ノウハウ解説
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2022年最新：人材紹介の市場規模
厚生労働省の令和2年度職業紹介事業報告書の集計結果によると、人材紹介の市場規模は5240億円となりました。令和元年から令和2年にかけて対前年比マイナス10.8％となったものの、人材紹介が誕生してから一貫して市場は拡大を続けています。
＜手数料収入の推移＞
- 平成28年度 3876億円
- 平成29年度 4446億円
- 平成30年度 約5418億円
- 令和元年度 約5874億円
- 令和2年度 約5240億円
後に紹介する人材派遣の市場規模と比較すると、人材紹介の方が市場規模は小さいです。しかし、人材紹介は人材派遣よりも利益率が高く、また免許取得時の資産要件が500万円のため、人材派遣より参入しやすい点が特徴です。
人材紹介業の免許に関しては、以下の記事で詳しく紹介しています。
【2022年最新版】5分でわかる人材紹介事業（有料職業紹介）免許取得マニュアル
人材紹介事業者数の推移
人材紹介の事業者数は2022年11月時点で29,489件となりました。1999年度の職業安定法改正における届出手数料制の導入により、実質的に手数料上限が撤廃されたことが事業所数の増加を後押ししています。
人材紹介はリーマンショックや新型コロナウイルスなどの景気変動の影響は受けるものの、基本的に少子高齢化で労働人口が減少しているため、市場は今後も拡大する見込みです。
労働力人口の推移と転職者数
少子高齢化で日本全体の人口が減っている一方、労働力人口は2015年から2020年にかけて増加を続けています。女性の社会進出が進み、特に20代後半から30代の女性が働きに出ていることが背景にあります。しかし、依然として出生率の低下や高齢化が進んでおり、再び労働力人口は減少する見込みとなっています。
労働力人口が減少していく予想がある一方で、国内の転職者数は300万人台をキープしています。コロナの影響で転職者数が減った時期はあったものの、直近の労働力調査（令和4年7～9月）では就業者6748万人のうち転職者数が313万人となり、前年同期から26万人増の結果となりました。
「日本の人口が減ると転職市場が小さくなるので、人材紹介ビジネスも縮小する」と短絡的に考えるのではなく、人口減の中でいかに転職希望者を集めていくかが鍵となりそうです。
参考：総務省統計局 労働力調査 令和4年7～9月
財務指標分析
人材紹介の財務指標分析のデータより、事業の特徴を紹介します。人材紹介と人材派遣の自己資本比率はサービス業全来とほぼ同水準で、安全性は特に問題ないと考えられます。収益性は、人材派遣のデータを含むとやや低く見えますが、人材紹介は派遣業より利益率が高いと言われています。
また、人材紹介は求職者集客と求人開拓以外に、多くの初期投資を必要としない事業形態のため、効率性は高いのが特徴です。
| 安全性 | 2018年度の人材紹介業・人材派遣業の自己資本比率は44.7%で。人材紹介業が分類されるサービス業の自己資本比率は43.1%と同水準となり、人材紹介業は比較的安定していると言える。 |
| 収益性 | 人材紹介業・人材派遣業の利益率は31%で、サービス業全体の45％と比較するとやや低めの水準。派遣業は派遣スタッフへの給与や社会保険料などの支払いが多くなるため、やや低い数値が出ていると予想される。人材紹介は、人件費と求職者・求人集客費がおさえられれば収益性がアップすると考えられる。 |
| 効率性 | 人材紹介業は労働集約型のビジネスモデルで多くの資本を必要としないことから、効率性は高いと評価される。 |
データ引用：リスクモンスター株式会社「職業紹介・労働者派遣業 産業分類コード91」
他人材ビジネスとの比較
人材紹介の市場規模について、人材派遣や再就職支援など他の人材ビジネスと比較してみました。
人材派遣
株式会社リクルートワークスの調査によると、2019年度の人材派遣業の市場は9兆2,000億円（前年度比6.6％増）となりました。人材紹介と比べると、人材派遣は人材ビジネスの中でもっとも市場が大きいことが分かります。特に近年では、同一労働同一賃金の法改正で派遣スタッフの賃金格差が是正されたり、不当な雇止めを防ぐ動きがあったため市場が拡大したと分析できます。
市場が好転した一方で、人材派遣は派遣スタッフの管理にコストがかかる上に法改正が多いため、人材紹介の方が事業参入が容易と考える人も少なくありません。
再就職支援
再就職支援業の市場規模は、2019年度321億円（同5.2％増）となりました。再就職支援とは、企業がやむを得ず社員を解雇、雇止めなどする際に再就職先探しを支援するもので、人材紹介の事業形態の一つです。コロナの影響で人員整理を実施する企業が増えて市場拡大の傾向があったものの、その後動きは鈍化しています。
求人情報サービス
求人情報サービス（求人広告）の市場規模は2019年から2020年にかけて、7669億円から4150億円へと大きく減少しました。掲載求人数も1089万件で、前年比マイナス4.7%となりました。求人情報サービスはアルバイト・パート、派遣などの非正規求人を多く扱っており、非正規求人は特にコロナで影響を受けたため市場縮小の後押しとなったと推測できます。
コロナ前の2018年度は市場規模が9528億円と好調だったことや、転職者数はそこまで減っていない点を鑑みると、求人広告市場は再び好転すると予測できます。
別の資料では、求人広告で扱う求人は人材紹介よりも年収が低いことが分かります。人材紹介と相性の良い求人と、求人広告で扱うべき求人を見極めて事業展開する必要があるでしょう。
人材紹介のトレンド
最後に、人材紹介のトレンドや今後注視したいトピックについて解説します。
転職が活発な産業は？
次に、入職者の経路別データを見ると、人材紹介では保健師・助産師・看護師や介護サービスといった専門性の高い職業の紹介実績が目立ちました。
| 職業分類 | 求人数 |
| 保健師、助産師、看護師 | 83万6383件 |
| 介護サービス | 67万6186件 |
| 営業 | 60万10件 |
| 歯科医師、獣医師、薬剤師 | 58万2835件 |
| 情報処理・通信技術者 | 56万9989件 |
| 社会福祉の専門的職業 | 55万5103件 |
| 一般事務 | 54万1673件 |
| 医師 | 25万8355件 |
| 開発技術者 | 24万6657件 |
| 医療技術者 | 19万6317件 |
これらのデータを見ると、人材紹介は引き続き医療や営業、IT人材など専門スキルが必要な求人市場でいかにマッチング精度を高めていけるかがポイントとなります。また、サービス業や飲食業といった求人広告経由で採用が決まりやすい職種を、人材紹介で扱えないか、今一度検討の余地がありそうです。
リモート対応
ウィズコロナの時代では、求職者面談や求人開拓時の商談のリモート化が当たり前になってきました。リモートの方が効率的に仕事ができるという考えがある一方で、企業の人事担当者との関係構築や、面接時の見極めの際は、適宜対面でのコミュニケーションも取り入れたいところです。
人材紹介の業務すべてをリモート化すべきなのか、どのタイミングで対面コミュニケーションを取り入れるべきか、各社の方向性を議論して効果的にリモート対応を行っていくことが重要です。
実績の見える化と健全な経営
職業安定法の改正により、近年は人材紹介事業者に対する様々な情報公開が求められてきています。現在、年に一度の有料職業紹介事業報告書で行った報告結果は、人材総合サービスサイトで誰でも閲覧できる状態となっています。人材紹介に参入する事業者が増えた今こそ、実績や自社ならではの取り組みを見える化し、差別化や顧客との信頼構築を図る必要があるでしょう。
また、国は中小企業の中途採用を推し進めるために、中小企業の中途採用比率を公開するよう義務付けました。今後も、転職に関する情報はオープンに扱う流れが続くと予想されます。
人材紹介実績の公開とあわせて優良事業者認定制度なども活用し、対外的に健全な経営を行っているとアピールするのもポイントとなりそうです。
まとめ
人材紹介の市場規模は約5240億円で、事業者数の増加や転職者数の推移から考えると、今後も拡大する見込みがあると言えます。人材紹介は派遣業よりも利益率が高い点や、求人広告の掲載求人よりも扱う求人の年収が高いのが特徴です。また、医療や介護、営業や通信など専門スキルを保有した人材を扱う人材紹介が多い傾向となっています。
市場は拡大しているものの、競合も増えていく中でいかに差別化要素を確率させるかが鍵となります。
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