少子高齢化の影響で人手不足が続く中、人材紹介の事業者は29,489件(記事執筆時点)となり増加が続いています。需要の高い人材ビジネスに新規参入してみたい、人材業界での経験を活かして人材紹介業を起業したいと考えている人も少なくありません。
本記事では、人材紹介業を起業する際の基礎知識や市場規模、トレンド、開業方法などを網羅的に解説します。
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今、人材紹介で起業すべきか?
人材紹介業に興味はあるものの、起業すべきか悩んでいる人もいるのではないでしょうか。結論、人材紹介の市場は今後も拡大が予想されており、参入余地はあるといえます。
しかし人材紹介の起業者も増えているため、本記事で紹介する基礎知識をしっかり理解・準備して臨まなければ勝ち残りは難しいでしょう。
本章では、人材紹介の起業を検討している人に向けて、人材紹介の市場規模や手数料収入の推移、人材派遣業や求人情報サービスなどの人材ビジネスとの違いを解説します。起業準備にぜひお役立てください。
人材ビジネスの市場規模
リクルートワークス研究所の調査結果によると、2019年度の人材ビジネス(人材紹介・人材派遣・求人情報サービス)の市場規模は9兆2,232億円でした。
内訳は、人材紹介が5,874億円、人材派遣が7兆8,689億円、求人情報サービスが7,669億円となっています。人材派遣の市場規模が圧倒的に大きいながらも、人材紹介の市場規模はほぼ右肩上がりで推移を続けています。
人材紹介業の市場規模については、次の記事で詳しく解説しています。
人材紹介の市場規模は?派遣との比較、コロナ後の動向、最新トレンドを紹介
求職者・求人者の推移
令和2年度職業紹介事業報告書の集計結果によると、求職者数は令和元年度まで右肩上がりとなっており、令和2年は減少となりました。コロナの影響で求職者数は減ったものの、平成28年度からの全体推移としては増加傾向です。
求人数は平成元年から令和2年にかけて減少幅は少なく、全体的に増加しています。コロナ時期も変わらず、多くの企業が積極的な採用活動を行っていることから、求人市場は非常に活発といえるでしょう。
<新規求職申込件数の年度別推移>
- 平成28年度 12,993,220件
- 平成29年度 18,167,384件
- 平成30年度 16,975,427件
- 令和元年度 20,018,757件
- 令和2年度 17,149,032件
<常用求人数の年度別推移>
- 平成28年度 5,646,812件
- 平成29年度 6,001,601件
- 平成30年度 6,544,405件
- 令和元年度 7,658,477件
- 令和2年度 7,774,715件
※数値は令和2年度職業紹介事業報告書より引用
手数料収入の推移
同資料によると、手数料収入は令和元年度まで大きく増加傾向となっていました。コロナ後はやや減少したものの、日本の人手不足を考えると、今後も人材紹介の市場は拡大すると予想されます。
<届出制手数料の推移>※単位:千円
- 平成28年度 380,910,954
- 平成29年度 438,433,844
- 平成30年度 536,125,070
- 令和元年度 583,234,494
- 令和2年度 522,174,594
人材派遣
人材派遣と人材紹介の主な違いを表でまとめました。
人材紹介 | 人材派遣 | |
ビジネスモデルの違い | 紹介先と求職者が雇用契約を結ぶ、紹介後に手数料を徴収できるビジネスモデル | 派遣元と派遣スタッフが雇用契約を結び、派遣先に派遣する |
参入のしやすさ | 資産要件500万円(現金・預金150万円) | 資産要件2000万円(現金・預金1500万円) |
事業メリット | 利益率が高く、成果報酬型でまとまった売上が入る | 派遣スタッフが継続就業すれば、継続的に利益確保が可能 |
事業デメリット | 求職者と求人企業をバランスよく集客しマッチング精度を上げるのが難しい | 派遣スタッフの労務、給与管理など業務量が多く、派遣法改正や景気変動の影響を受けやすい |
市場の大きさ | 5000億を超える市場規模だが、派遣業には劣る | 7兆を超える巨大な市場規模 |
人材派遣は、派遣元が派遣スタッフと雇用契約を結び、派遣先企業に派遣するビジネスモデルです。そのため派遣業では、派遣スタッフの管理業務やトラブル回避などが事業運営で重要です。
業務の煩雑さや資産要件の高さを考えると、人材紹介のほうが比較的、少人数でスピーディーに起業しやすいといえます。
売上面を比較すると、派遣業は派遣が続く限り安定収入を得られる点がメリットです。一方、人材紹介は1回の手数料が大きいので利益率が高い点が魅力的でしょう。
どちらも競合となる事業者数は年々増えているため、起業前にじっくり戦略を練る必要があります。
求人情報サービス(求人広告)
求人情報サービス(求人広告)と、人材紹介の相違点をまとめました。
求人情報サービスは採用ができてもできなくても企業から前課金型でサービス利用料を徴収する点が特徴的です。広告業の要素も強いので、Web制作やインターネットサービスに関する幅広い知識が求められます。
人材紹介 | 求人情報サービス | |
ビジネスモデルの違い | 成果報酬型で理論年収の35%を徴収できる | 前課金型で、掲載費用は数万円~数百万円まで幅広い |
参入のしやすさ | 資産要件500万円(現金・預金150万円) | 求人広告代理店の契約なら0円でパートナーになることも可能。求人サービスを1から立ち上げるには数百万~数千万円かかる |
事業メリット | 成果報酬型のため、求人募集ニーズがあれば企業と契約を結びやすい | アルバイト・パート、新卒、中途採用など様々な領域をカバーしているので、自身の強みを活かした事業展開が可能 |
事業デメリット | 求職者と求人企業をバランスよく集客しマッチング精度を上げるのが難しい | 前課金型のため、顧客との期待値調整が難しく他社とコンペになりやすい。広告制作の専門知識が必要となる |
市場の大きさ | 5000億円を超える規模で年々増加 | コロナの影響もあり、約7600億円から約4000億円へと市場縮小 |
人材紹介の開業の流れ
人材紹介免許の取得のためには、資産要件を満たし、必要書類を準備して労働局に申請を行います。本章では、人材紹介の起業の流れを解説します。
事業計画を練る
日本は人手不足が続き人材紹介ニーズが高い状態ですが、競合の人材紹介会社が無数にいる中で勝ち残るには念入りな事業計画が必須です。どんなスペックの求職者や求人企業を狙って集客していくのか、求職者や企業をいかに低コストで集めていくかなど、他事業者との差別化要素を検討していきましょう。
資産要件を満たす
人材紹介業の免許取得の際は、以下の資産要件を満たさなくてはなりません。
(1) 資産(繰延資産及び営業権を除く。)の総額から負債の総額を控除した額(以下「基準資産額」という。)が500万円に申請者が有料職業紹介事業を行おうとする事業所の数を乗じて得た額以上であること。
(2) 事業資金として自己名義の現金・預貯金の額が、150万円に申請者が有料職業紹介事業を行おうとする事業所の数から1を減じた数に60万円を乗じた額を加えて得た額以上となること。
職業紹介責任者講習を受講
各事業所に職業紹介責任者を置くため、事前に職業紹介責任者講習を受講する必要があります。以下の実施機関一覧を参考にしてください。
オフィスや人員を確保する
人材紹介を起業するときは、求職者と面談するためのスペースや、RA・CAなど営業社員の確保が必要です。一人で人材紹介を運営することも可能ですが、求職者との面談や求人票の管理、スカウトや選考の調整など業務量が多いため、ゆくゆくは社員を雇用していくことをおすすめします。
なお、人材紹介のオフィスルールは平成29年に法改正となりました。
・事務所の面積はおおむね20㎡以上
・求職者と企業のプライバシー保護のため、以下のいずれかの措置を講ずること
①人材紹介を実施に必要な構造、設備を用意すること。たとえば、個室の設置やパーティションで区分するなど。
②他の求職者や企業と同室にならず、対面で職業紹介ができること。例えば予約制やレンタルオフィスの予約をするなど。
CAやRAの仕事内容や役割は、次の記事を参考にしてみてください。
人材紹介の営業(CA/RA)は激務できつい?CA/RAの仕事内容と営業ノウハウ解説
職業紹介免許を取得
事業計画書や資産要件など準備が整ったら、書類を準備して最寄りの労働局に申請をします。申請してから許可が下りるまで2~3か月の時間がかかるため注意しましょう。
免許取得の詳しい流れや準備するものは、次の記事でご確認ください。
【最新版】5分でわかる人材紹介事業(有料職業紹介)免許取得マニュアル
人材紹介業に関わる法律と禁止事項
人材紹介業は、職業安定法によって様々な運営ルールが定められています。起業前に必ず知っておきたい事項をピックアップしてご紹介します。
職業紹介事業報告書
事業者は毎年4月30日までに、最寄りの労働局へ職業紹介事業報告書の提出が義務付けられています。報告書には、紹介実績や離職数、手数料収入、返戻金制度、社員教育状況などを記入します。
記入する内容は、最寄りの労働局のホームページなどをご確認ください。
人材紹介の手数料
人材紹介の手数料には、上限制手数料、届出制手数料、受付手数料の種類があります。多くの事業者が届出制手数料を選んでおり、紹介した人材の理論年収35%前後が相場となっています。
返戻金制度
毎年、労働局に提出する職業紹介事業報告書に、返戻金制度の有無や概要を記載する義務があります。返戻金制度とは、紹介した人材が早期離職した場合に紹介手数料を返還する規定を指します。
手数料のルールや決め方、返戻金制度については次の記事で詳しく説明しています。
人材紹介の手数料の決め方とは?手数料の概要や相場を紹介
備え付けが必要な帳簿
人材紹介業の運営中は、求人求職管理簿と手数料管理簿の2つを備え付ける義務があります。どちらも保存は2年間です。
紹介してはいけない業種
人材紹介業は免許制となっていますが、港湾運送業務と建設業務は職業のあっせんが禁止されています。
事業を成功させるポイントとは
最後に、人材紹介の起業を成功させるために知っておきたいポイントを紹介します。
1.求人・求職者の差別化
人材紹介の起業を軌道に乗せるには、ターゲットとなる業種や職種の選定が重要です。市場に人材が少ない職種は紹介手数料を高くとれる可能性はありますが、競合が多く集客コストも大きくなるはずです。
- ゼネラル領域×第二新卒を中小企業に提案する
- IT業界×ITエンジニアをスタートアップに提案する
- 地方在住者×フルリモートに特化で都心部のベンチャー企業に提案する
など、どのような差別化を図るか慎重に検討しましょう。
2.集客方法の差別化
求人、求職者の差別化と同時に検討したいのが集客方法です。近年、SNSを活用して集客強化する紹介会社もいますが、SNSを利用しない職種や企業も多数存在します。また、投稿するコンテンツの企画・作成に運用コストがかかる点も考慮して集客方法を検討しましょう。
求職者の集客は、従来のスカウトサービスやWeb広告、SNSなどを掛け合わせて戦略を練るのがおすすめですが、企業の求人開拓は求人データベースを活用すると効率的です。
求人データベースとは何か、サービス概要や特徴を知りたい人は次の記事を参考にしてみてください。
【具体例付き】求人データベースとは?メリット・デメリットも解説
まとめ
人材紹介の起業に必要な基礎知識をご紹介しました。本記事で解説した市場規模の推移や、他人材ビジネスとの相違点、起業の流れなどをぜひ参考にしてみてください。
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