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【人材紹介会社必見】裁量労働制とは?求職者の適性見極めから企業提案まで完全ガイド【2024年改正対応】

2024年4月、労働法改正により裁量労働制が変わりました。裁量労働制に関する知識をアップデートして、求職者対応、そして採用企業への対応それぞれに活かす必要があります。

本記事では、裁量労働制の基本情報から求職者の適性見極め、企業への提案方法まで、人材紹介会社が知っておくべき実務知識を網羅的に解説します。

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裁量労働制とは?人材紹介会社が知るべき基礎知識

裁量労働制の基本概念と2024年改正のポイント

裁量労働制とは、労働者の裁量に委ねる必要がある業務について、実際の労働時間にかかわらず、労使で定めた時間働いたとみなす制度です。「みなし労働時間制」とも呼ばれ、働く時間と場所を労働者が自由に決められる点が特徴です。

重要なポイントは、この制度が労働時間の規制を緩和する代わりに、労働者の自律性と専門性を前提としていることです。単なる残業代削減手段ではなく、高度な専門性を持つ人の働き方を支援する制度として設計されています。

2024年4月の主要改正のうち最も重要な変更は個人同意の完全義務化です。これまで努力義務だった労働者本人の同意が、法的な必須要件となりました。また、同意撤回手続きの明文化により、労働者は制度適用後でも同意を撤回できる権利が保障されています。

健康・福祉確保措置の強化も重要な変更点です。企業は労働者の健康管理について、より厳格な義務を負うことになりました。人材紹介会社としては、企業がこれらの要件を満たしているかを確認することが、法的リスク回避の観点から必須となっています。

専門業務型と企画業務型の違いと対象職種

裁量労働制には「専門業務型」と「企画業務型」の2つの類型があり、それぞれ適用要件と対象職種が明確に定められています。

専門業務型裁量労働制は、厚生労働省が指定する19の専門業務が対象です。システムエンジニア、デザイナー、研究開発職、弁護士、公認会計士、金融商品の開発業務などが含まれます。2024年改正で新たに「銀行・証券会社等におけるM&A業務」が20番目の対象業務として追加されました。

これらの職種に共通するのは、業務の進め方や時間配分を労働者の専門的判断に委ねる必要があることです。人材紹介会社が求職者を評価する際は、単にスキルがあるだけでなく、自律的な業務遂行能力があるかを見極めることが重要です。

企画業務型裁量労働制は、事業運営に関する企画・立案・調査・分析業務が対象です。経営企画、商品企画、営業企画などが該当しますが、単純な営業活動や定型的な企画業務は対象外です。

企画業務型の適用には、労使委員会の設置と5分の4以上の決議が必要です。専門業務型よりも厳格な手続きが求められるため、人材紹介会社としては、クライアント企業の制度運用体制をより慎重に確認する必要があります。

人材紹介会社が押さえるべき法的リスクと注意点

裁量労働制を扱う人材紹介会社が直面する主要なリスクは、制度の誤解に基づく情報提供企業の不適切運用への関与です。

情報提供に関するリスクとして最も深刻なのは、「残業代が一切支払われない」という誤った説明です。実際には、深夜労働(22時から5時)と休日労働については、裁量労働制適用者にも割増賃金の支払い義務があります。この点を間違って説明すると、重大な不利益をもたらす可能性があります。

企業の不適切運用に関しては、「偽装裁量労働制」の見極めが重要です。指定職種以外の業務に裁量労働制を適用したり、実際には裁量がない業務で制度を悪用したりするケースが存在します。人材紹介会社がこのような企業に候補者を紹介すると、間接的に違法行為に関与することになります。

対策として重要なのは、定期的な法改正情報の確認と、労働法に詳しい専門家との連携体制の構築です。また、企業の制度運用状況を定期的に確認し、問題があれば速やかに是正を求めることが、長期的な信頼関係の維持につながります。

裁量労働制に向いている人・向いていない人の見極め方

Young woman holding her head.

提案する求人が裁量労働制を採用しているものである場合、CAとしては求職者がその働き方に向いているかどうかの見極めも重要となります。

ここでは向いている人、向いていない人の一般的な特徴を整理して紹介します。

適性がある求職者の5つの特徴

裁量労働制で成功できるかどうか、以下の特徴に当てはまるかで見ていくことができます。

第一の特徴は自律性の高さです。上司からの細かい指示を待つのではなく、自分で優先順位を決めて業務を進められる人が適しています。面談時には、「前職でどのように業務の優先順位を決めていましたか?」というような質問で確認できます。

第二の特徴は専門性への強いこだわりです。単に給与や待遇だけでなく、自分の専門分野を深めることに意欲を持つ人材が向いています。「今後どのようなスキルを身につけたいですか?」という質問に対して、具体的で一貫した回答ができるかがポイントです。

第三の特徴は時間管理能力です。裁量労働制では、結果に対する責任が重くなりがちです。期限管理や効率的な業務遂行ができる人材でないと、長時間労働に陥るリスクがあります。

第四の特徴はコミュニケーション能力です。上司や同僚との連携を自発的に取れる人材が成功しやすい傾向があります。特に、進捗状況の報告や課題の相談を適切なタイミングで行える能力が重要です。

第五の特徴は成果志向です。プロセスよりも結果を重視し、目標達成に向けて柔軟にアプローチを変更できる人材が適しています。

裁量労働制で失敗する人の共通パターン

裁量労働制で仕事をするとつらい思いをしてしまいがちな人の特徴としては、以下のものがあります。

最も危険なパターンは、指示待ち型の思考です。常に上司からの明確な指示を求め、自分で判断することを避ける傾向がある人材は、裁量労働制で高いストレスを感じます。このような人材を裁量労働制の職場に紹介すると、早期離職のリスクが高まります。

時間管理が苦手な人材も失敗しやすいパターンです。締切を守れない、複数の業務を同時進行できない、集中力が長続きしないなどの特徴がある場合、裁量労働制での成功は困難です。

完璧主義者すぎる人材も注意が必要です。必要以上に細部にこだわり、効率性を犠牲にしてしまう傾向がある場合、裁量労働制の成果主義的な環境では評価されにくくなります。

職場での孤立を恐れる人材も向いていません。裁量労働制では、他の従業員と異なる勤務時間になることが多く、職場での人間関係の築き方も工夫が必要です。

求職者への裁量労働制説明術|誤解と解消法

面接で使える説明スクリプト集

求職者に裁量労働制を正確に説明できれば、人材紹介会社の信頼性アップにつながります。以下は実際の面談で使用できる説明例です。

制度の基本概念を説明する際の文例「裁量労働制は、専門性の高い業務において、働く時間と場所をあなた自身が決められる制度です。例えば、朝9時から夕方6時という固定的な勤務時間ではなく、プロジェクトの進捗や締切に応じて、10時から7時にしたり、在宅勤務を組み合わせたりできます。重要なのは、成果を出すことであり、そのプロセスはあなたの専門的判断に委ねられています。」

給与制度について説明する際の文例 「給与については、実際の労働時間に関係なく、あらかじめ決められた『みなし労働時間』で計算されます。ただし、深夜労働(22時から5時)や休日労働については、通常の労働者と同様に割増賃金が支払われます。つまり、『残業代が一切出ない』ということはなく、適切な制度運用の企業では、一般的な労働者と比較して10%から15%程度の賃金プレミアムが設定されています。」

働き方の自由度について説明する際の文例 「この制度の最大のメリットは、あなたの専門性とライフスタイルに合わせて働き方を調整できることです。集中力が高い時間帯に重要な業務を行い、体調や家庭の事情に合わせて勤務時間を調整できます。ただし、この自由度は責任と表裏一体で、結果に対する責任は重くなります。」

求職者の5大誤解と正しい伝え方

裁量労働制について、求職者が持ちやすい5つの誤解と、それぞれの正しい伝え方を解説します。

誤解1:「残業代が一切支払われない」 

伝え方例「深夜労働と休日労働については、裁量労働制でも割増賃金が支払われます。また、適切に運用されている企業では、みなし労働時間を実際の労働時間より長めに設定し、実質的な残業代を含んだ給与体系になっています。」

誤解2:「無制限に働かされる」

伝え方例「2024年の改正により、企業は労働者の健康確保措置を強化することが義務付けられました。定期的な健康状態の確認、相談窓口の設置、必要に応じた労働時間の制限などが法的に求められています。」

誤解3:「給与が下がる」 

伝え方例「裁量労働制は専門性の高い業務に適用されるため、一般的には基本給が高く設定されています。市場データでは、同等の職種と比較して10%から15%程度の賃金プレミアムがある場合が多いです。」

誤解4:「自由すぎて管理されない」

伝え方例「働く時間と場所の自由度は高いですが、目標管理や成果評価は通常の労働者以上に厳格です。定期的な進捗確認や成果報告が求められ、むしろ結果に対する責任は重くなることもあります。」

誤解5:「誰でも対象になる」 

伝え方例「裁量労働制は、法律で定められた特定の専門業務にのみ適用されます。あなたの業務内容が対象職種に該当し、かつ実際に裁量を持って業務を遂行できる環境であることが前提条件です。」

採用企業の裁量労働制適用可否を見極める方法

20の指定職種適用チェックリスト

裁量労働制の適法性を確認するため、まず対象職種の適用可否を正確に判断する必要があります。以下は専門業務型裁量労働制の20の指定職種のチェックリストです。

技術系職種(1-6番)

  1. 新商品・新技術の研究開発業務
  2. 情報処理システムの分析・設計業務
  3. 新聞・出版の記事作成業務
  4. デザイン業務
  5. 放送番組・映画等の制作業務
  6. コピーライター業務

専門士業・金融系職種(7-15番) 

7. システムコンサルタント業務 

8. インテリアコーディネーター業務

9. ゲームソフト開発業務 

10. 証券アナリスト業務 

11. 金融商品開発業務 

12. 大学教授・准教授・講師業務 

13. 公認会計士業務 

14. 弁護士業務 

15. 建築士業務

コンサルティング・その他専門職種(16-20番)

 16. 不動産鑑定士業務 

17. 弁理士業務 

18. 税理士業務 

19. 中小企業診断士業務 

20. M&A業務(2024年新規追加)

適用可否の判断ポイント

  • 業務内容が上記20職種のいずれかに明確に該当すること
  • 単に類似しているだけでは不十分
  • 営業職や一般事務職は対象外
  • 管理職であっても、上記職種に該当しない限り適用不可

労使協定の有効性確認方法

企業の労使協定が適法で有効かを確認することも、人材紹介会社として欠かせない業務です。

確認すべき基本要件

  • 労働基準監督署への届出が完了していること
  • 労働者代表が適切な手続きで選出されていること
  • 協定書に必要事項がすべて記載されていること
  • 2024年改正に対応した内容になっていること ※下記参照

2024年改正で追加された必須記載事項

  • 労働者の同意を得る手続き
  • 労働者が同意しなかった場合の取り扱い
  • 労働者が同意を撤回した場合の取り扱い
  • 健康・福祉確保措置の具体的内容

企業への確認質問例 

「労働基準監督署への届出は完了していますか?届出受理印のある協定書を確認させていただけますか?」 

「労働者代表の選出方法について教えてください。選出過程の記録は残っていますか?」 

「2024年4月の改正に対応した協定書への更新は完了していますか?」

危険な「偽装裁量労働制」の見分け方

不適切な裁量労働制の運用を見極めることは、企業側・人材紹介会社側双方ともリスクを回避するために不可欠です。ヒアリングを通じて状況をまず把握してみましょう。

典型的な偽装パターン

  • 指定職種以外の業務(営業、一般事務等)への適用
  • 実際には上司の指示で業務を行っているにもかかわらず、形式的に裁量労働制を適用
  • 残業代削減のみを目的とした制度導入
  • 労働者の同意を得ずに制度を適用

危険な文脈

  • 「営業目標は会社が決めるが、裁量労働制なので残業代は出ない」
  • 「毎朝の朝礼参加と日報提出は必須だが、それ以外は自由」
  • 「勤務時間は9時から6時が基本だが、裁量労働制なので残業代はない」

裁量労働制求人の効果的な提案戦略

求職者のキャリア志向別アプローチ方法

求職者のキャリア志向に応じて、裁量労働制の提案方法を変えることでよりイメージしてもらいやすくなる可能性があります。求職者のタイプ別に整理しました。

専門性追求型の求職者 

このタイプの求職者は、自分の専門分野を深めることに強い関心を持っています。アプローチ方法としては、「裁量労働制により、定型業務から解放され、より高度で専門的な業務に集中できる環境」という点を強調します。

具体的には、「この制度により、会議や定型報告業務を最小限に抑え、あなたの専門性を最大限発揮できるプロジェクトに時間を集中できます」という説明は効果があるでしょう。

ワークライフバランス重視型の求職者 

このタイプの求職者には、「時間と場所の自由度」という点を前面に出します。ただし、「楽ができる」という誤解を与えないよう注意が必要です。

「結果に対する責任は重くなりますが、その分、あなたの生活パターンや家庭の事情に合わせて勤務時間を調整できます。効率的に成果を出すことで、プライベートの時間も確保しやすくなります」という説明だと誤解がないでしょう。

キャリアアップ志向型の求職者 

このタイプの求職者には、「成果主義的な評価制度」と「裁量権の拡大」という点を強調します。

「裁量労働制では、プロセスよりも結果が重視されるため、あなたの創意工夫や効率的な業務遂行が直接的に評価されます。管理職への登用においても、自律的な業務遂行能力が高く評価される傾向があります」という説明だと興味を持ってもらえるかもしれません。

成功する求人票の見極めと候補者提案

裁量労働制の求人票で確認すべきポイントと、効果的な候補者提案方法を解説します。

求人票の必須確認事項

  • 職種が20の指定業務に該当するか
  • みなし労働時間と実際の平均労働時間の記載
  • 健康・福祉確保措置の具体的内容
  • 同意撤回の手続きに関する記載
  • 深夜・休日労働の割増賃金の取り扱い

良い求人票の例

  • 裁量労働制の意義と目的が明確に記載されている
  • 具体的な業務内容と裁量の範囲が詳細に説明されている
  • 成果評価の基準と方法が明示されている
  • 労働者の健康管理に関する取り組みが具体的に記載されている

2025年以降の市場動向と人材紹介会社の戦略

規制強化が転職市場に与える影響

2024年の裁量労働制改正により、転職市場に影響が出ています。規制強化により、適切な制度運用ができない企業は制度を廃止せざるを得ず、一方で適切に運用できる企業には優秀な人材が集中する傾向が強まっています。

この市場環境の変化により、人材紹介会社には新たな機会が生まれています。つまり、裁量労働制を導入したい企業にとっては参入ハードルが高く見えている現在、制度の正確な理解と適切な説明ができる人材紹介会社は、他社との差別化を図ることができます。

まとめ

裁量労働制は、人材紹介会社としては押さえておきたい知識の一つです。求人票を見る際だけでなく、採用企業とのやりとりやコンサルティング、そして求職者支援と多方面に生かせる知識です。

裁量労働制は単なる労働時間制度ではなく、現代の働き方改革と人材活用の重要な要素です。人材紹介会社として、この制度を深く理解し、適切に活用することで、クライアント企業と求職者の成功に貢献していきましょう。

よくある質問

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Q1. 裁量労働制の求職者にはどんな人材が向いていますか?

裁量労働制で成功する人材には5つの特徴があります。

第一に自律性の高さです。上司からの指示を待つのではなく、自分で優先順位を決めて業務を進められる人材が最も適しています。面談時に「前職でどのように業務の優先順位を決めていましたか?」と質問することで確認できます。

第二に専門性への強いこだわりです。単に給与や待遇だけでなく、自分の専門分野を深めることに意欲を持つ人材が向いています。

第三に時間管理能力です。期限管理や効率的な業務遂行ができる人材でないと、長時間労働に陥るリスクがあります。

第四にコミュニケーション能力です。上司や同僚との連携を自発的に取れる人材が成功しやすい傾向があります。

第五に成果志向です。プロセスよりも結果を重視し、目標達成に向けて柔軟にアプローチを変更できる人材が適しています。

逆に、指示待ち型の思考の人材、時間管理が苦手な人材、完璧主義すぎる人材は向いていません。

Q2. 求職者から裁量労働制について質問されたらどう答えるべきですか?

求職者への説明では、正確な情報提供と誤解の解消が最も重要です。

制度の基本を分かりやすく説明します。「裁量労働制は、専門性の高い業務において、働く時間と場所をあなた自身が決められる制度です。重要なのは成果を出すことであり、そのプロセスはあなたの専門的判断に委ねられています」

よくある誤解を解消します。「残業代が一切出ない」という誤解に対しては、「深夜労働と休日労働については、通常の労働者と同様に割増賃金が支払われます」と正確に説明します。

メリットとリスクの両方を説明します。自由度の高い働き方というメリットがある一方で、「成果に対する責任が重くなる」「自律的な業務遂行能力が求められる」といったリスクも正直に伝えます。

個人同意の重要性を強調します。「入社後に制度の詳細を説明し、あなたの同意を得てから適用されます」「同意後でも、条件が変われば撤回することができます」という点を明確に伝えることが重要です。

説明内容については、口頭だけでなく書面でも提供し、記録を残すことで、後のトラブルを防ぐことができます。