人材紹介の売上は、企業(求人者)から受け取る成果報酬の手数料が主なものです。
本記事では、人材紹介手数料の金額のルールや決め方、相場、返戻金制度などを解説します。これから人材紹介業を始めるにあたり、手数料をどのように決めればいいか悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。
人材紹介会社の立ち上げに必要な
5つのツールを一括ダウンロード
手数料の制度概要
人材紹介の事業者は、法律で定められた手数料や報酬以外は受け取ってはいけないルールとなっています。まずは手数料に関する基本ルールを紹介します。
上限制手数料
上限制手数料とは、紹介した求職者が6か月間雇用された際の賃金の100分の10.8(免税事業者は10.3)を上限として徴収できるものです。無期雇用契約につき、同じ企業に引き続き6か月間雇用された場合は、以下が上限となっています。
① 6か月間の支払われた賃金の10.8%以下(免税事業者は10.3%以下)
② 6か月間に支払われた賃金額から、臨時に支払われる賃金と3か月を超える期間ごとに支払われる賃金を除いた額の14.5%以下(免税事業者は13.8%以下)
上限手数料を選ぶ人材紹介会社は少なく、ほとんどの事業者が後に説明する届出制手数料を使っています。
届出制手数料
届出制手数料とは、上限制手数料以外の方法として認められている徴収方法で、手数料の種類や金額などを手数料表にまとめて厚生労働大臣に届出をするものです。求人の申し込みまたは、求職の申し込みを受理したとき以降に徴収が可能です。
届出制手数料の額は、基本的に事業者が自由に決めることができますが、業界の慣習により求職者の理論年収×35%前後が相場となっています。
いくら自由に決められるといっても、国が「著しく不当」と判断した場合は、手数料の変更命令が出ます。たとえば、求職者や企業の人種や国籍によって極端に手数料を上下させたり、「その他付加的なサービス」として詳細の分かりづらい手数料を設定したりするなどです。
受付手数料
受付手数料には、求人受付手数料と求職受付手数料の2種類があります。求人受付手数料は、求人の申し込み1件につき690円を限度として企業(求人者)から徴収できるものです。手数料表の届け出は不要で、上限制手数料とのみ組み合わせが可能となっています。
一方、求職者手数料とは、芸能家、モデル、経営管理者、科学技術者、熟練技能者といった職業限定で徴収できる手数料で、1か月3回まで・1回690円(免税事業者は660円)を限度として徴収できます。
紹介手数料の決め方・相場
人材紹介の手数料は、前述の通り、求職者の理論年収×35%前後で設定することが多いです。明確なルールがあるわけではなく、業界内の慣習で3割程度となっています。
手数料を決めるときは、各人材紹介会社で扱う求職者の年齢(若手、中堅、管理職以上など)や、業種(介護、医療、Web、飲食など)、職種(ITエンジニア、営業など)といった要素を考慮すると良いでしょう。
たとえば、多くの企業が母集団形成に悩んでいるITエンジニアや資格ありきの専門職種は、求職者が市場に少なく採用難易度が高いため、紹介手数料も高くなる傾向です。また、管理職やハイクラス人材の場合は理論年収の50%以上を提示することも少なくありません。
自社の手数料をいくらにするか考えるときの参考として、業種・職種別の相場例や、大手エージェントの手数料相場などを紹介します。
業種・職種や事業形態ごとの相場例
採用難易度の高い介護・保育・看護といった分野や、サーチ型(ヘッドハンティング型)の場合は紹介手数料を40~50%で設定する人材紹介会社もあります。届出制手数料の額を公開している人材紹介会社の例を紹介します。
例1:介護・保育・看護
届出制手数料として求職者の就職後1年間に支払われる賃金見込額40%(セントスタッフ株式会社)
例2:サーチ・スカウト型(特定の条件による特別の求職者の開拓やそのための調査・探索)
求職者の就職後、雇用契約期間中(雇用期間が1年を超える場合は最大1年間分)に支払われる賃金(内定書や労働条件通知書等に記載されている額)の50%(株式会社セブン・マークス)
例3:編集・制作、DTP、WEB編集、英語翻訳などの専門職
求職者の就職後 1年間に見込まれる賃金総額(100万円未満の場合は100万円として計算)の40%を上限(朝日新聞総合サービス株式会社)
新卒と中途採用の相場
中途採用の人材紹介手数料は35%前後で設定する企業が多いですが、新卒向けの人材紹介は、1人あたりの固定報酬を設定する場合もあります。たとえば、文系の新卒採用が1人決定したら90万円、理系の場合は100万円というような形です。
新卒を対象とした人材紹介業を行いたい人は、新卒向けの大手ナビサイトや就活イベント(合同説明会)、ダイレクトスカウトサービスなどとも料金を比較して、手数料を決めると良いでしょう。
大手エージェントの手数料相場
大手人材紹介会社の紹介手数料の相場は以下の通りです。各公式サイトに、届出制手数料で理論年収の35%とする記載があります。
リクルートエージェント | 35% |
type転職エージェント | 35% |
dodaエージェント | 35% |
理論年収の計算方法
紹介手数料を計算するときは理論年収がベースとなりますが、そもそも理論年収とはどのように計算するのでしょうか?理論年収とは、年度の初めから年度末まで在籍したと仮定して計算した理論上の年収です。
理論年収
採用した人材の給与月額×12か月+通勤手当+賞与などの一時金+諸手当(時間外手当や資格手当など)
諸手当の中に時間外手当や資格手当、役職手当、住宅手当などを含めて計算するので注意しましょう。給与が変動しやすい職種の場合は、採用した企業の平均的な給与や、前年度の賃金実績をもとに計算をします。
返金規定(返戻金制度)とは
人材紹介業者は年に一度、職業紹介事業報告書を事業所を管轄する労働局に提出する義務がありますが、その報告書内に必ず、返戻金制度の記載をしなくてはなりません。
返戻金制度とは、人材紹介経由で入社した方が早期に辞めてしまった場合、紹介先企業に手数料を返還する規定を指します。返戻金制度を設けなくても違反ではありませんが、ほとんどの人材紹介会社では返戻金制度を設けており、制度がある事業者は必ず職業紹介事業報告書に概要を記載します。
また、手数料表と返戻金制度の内容は、事務所内の見える場所に掲示することが必要です。
・返戻金制度(その紹介により就職した者が早期に離職したことその他これに準ずる事由があつた場合に、当該者を紹介した雇用主から徴収すべき手数料の全部又は一部を返戻する制度その他これに準ずる制度をいう。以下同じ。)
・有料職業紹介事業者は、その事業所内の一般の閲覧に便利な場所に、手数料表、返戻金制度に関する事項を記載した書面及び業務の運営に関する規程を掲示しなければならない。
手数料の返金相場
返戻金制度の設定額は、入社から離職までの期間が早ければ早いほど高い返戻率となります。以下は払戻金制度の金額例です。
引用:リクルートキャリア
本サービスでの紹介によって採用された応募者が、入社後6ヶ月以内に明らかに応募者の責により解雇された場合、または自己都合により退職した場合、弊社は受領したコンサルティングフィーのうち、下記の金額を貴社に返還いたします。ただし、返還のご請求期間は、対象となる方が退職された日の翌月末日までとさせていただきます。翌々月1日以降のご請求につきましては、理由の如何を問わず返還できかねます。あらかじめご了承ください。
1ヶ月以内で退職した場合 コンサルティングフィーの80%
1ヶ月超え3ヶ月以内で退職した場合 コンサルティングフィーの50%
3ヶ月超え6ヶ月以内で退職した場合 コンサルティングフィーの10%
企業との契約を行う前に知っておきたい基礎知識に関しては、以下で説明しています。
【2022年最新版】人材紹介の基本契約書と必要書類を徹底解説
手数料管理簿の備え付け義務
人材紹介会社は、事業内に手数料管理簿という帳簿を備え付けておく義務があります。手数料管理簿は、手数料徴収が完了した後、保存義務は2年間です。
帳簿に記録する内容は以下の通りです。
①手数料を支払う者の氏名または名称
②徴収年月日
③手数料の種類
④手数料の額
⑤手数料の算出根拠
人材紹介の手数料は高いのか
人材紹介会社の利益を追求するために、手数料を高めに設定したいと考える方も少なくありません。そもそも紹介会社を利用する企業から見て、理論年収の35%という手数料は高すぎるのでしょうか。
採用費を多く割けない零細企業の中には、人材紹介の手数料が高すぎてサービスを利用できない企業もあるのは事実です。しかし、人材紹介は成果報酬のため、採用しない限り一切無駄な費用がかかりません。
求職者の集客、面談、スクリーニングなどを人材紹介会社が代わりに行っている点も鑑みると、一概に手数料が高いとは言えないでしょう。
求人広告のような前課金型サービスであれば、万が一応募者が0名でも、広告掲載費が数十万円~数百万円かかります。また、人材派遣では派遣スタッフを受け入れている間、継続して手数料や人件費がかかります。他の人材ビジネスと比較しながら、人材紹介の手数料額を決めていってください。
人材紹介業の最新トレンドについては、以下の記事を参考にできます。
人材紹介の市場規模は?派遣との比較、コロナ後の動向、最新トレンドを紹介
まとめ
人材紹介の手数料とは、人材を紹介した企業から徴収するもので、入社する方の理論年収35%前後が相場です。届出制手数料を選べば事業者ごとに自由に手数料額を決められますが、業界内の水準や、紹介する人材の採用難易度などを考慮して決定しましょう。
事業運営の際は、手数料管理簿の保存や返戻金制度の報告など対応が必要です。法令等を正しく理解しておきましょう。
なお、人材紹介会社の求人開拓を後押しする求人データベースでは、手数料・理論年収の定義や返戻金規定が求人ごとに予めきちんと定められています。求人開拓にかかるコストをおさえつつ、手数料規定の確認の手間も削減できるのでおすすめです。
人材紹介の企業開拓にお困りの方は、求人データベースをご活用ください!
毎月1500件以上の新規求人 常時40,000件以上の求人掲載
求人データベースcircus AGENTの
サービス資料をダウンロード