【前編】人材紹介事業を最短で収益化する
60日で成果につなげる実践ロードマップ

はじめに|経験よりも「迷わない状態」を先につくる
立ち上げ初期に早く成果を出す人は、必ずしも人材業界の経験者とは限りません。むしろ差が出るのは、「感覚で進める」のか、「仕組みとして型化する」のかという姿勢です。経験がある人ほど、過去のやり方をそのまま持ち込み、判断基準が言語化されないまま動いてしまうケースがあります。一方、未経験でも、面談や推薦、案件選定の基準を最初に整理している人は、少ない案件数でも前に進めます。
本記事では「60日」を、有料職業紹介事業の免許取得後、紹介事業を開始した日を起点とした60日間と定義し、この前編では、そのうち最初の30日間で必ずやっておくべきことを、具体的な数字や行動レベルまで落として解説します。
立ち上げ期に重要なのは、頑張ることではなく、迷わないことです。そのためには、最初の段階で「考えなくても一定の成果が出る状態」を意図的につくる必要があります。
最初の30日間のスケジュール
| 期間 | やること | 補足 |
| 1〜7日目 | 準備(領域・KPI・型づくり) | 集客・面談・推薦の下準備 |
| 8〜30日目 | 求人データベースで分析を始める | 決まる構造を理解 |
| 8〜30日目 | 求人開拓を最小単位で始める | 企業対応を回す |
1〜7日目|準備(領域・KPI・型づくり)

やるべきことが曖昧なまま動き出すと、忙しいだけで成果につながりません。ここでは、最初の7日間で固めておくべき5つのポイントを整理します。
① 領域を決める
ここで言う領域とは、業界や職種を1つに絞ることではありません。
「受ける仕事」と「受けない仕事」の線引きを決めることです。
最低限、以下の3点を文章で書き出します。
- 主に支援する求職者のレベル(例:未経験中心、経験3年以上など)
- 主に支援する企業の状態(例:立ち上げ期、人員拡大フェーズなど)
- 初期フェーズでは受けない条件(例:年収帯、職種、勤務形態)
この基準がないまま動くと、面談は増えても推薦が出せず、30日以内に手詰まりになります。独立前や免許取得前でも、この整理は進めておくことが可能です。
② 最初の30日間のKPIを決める
立ち上げ初期によくある失敗が、「KPIを設定せずにとりあえず動く」ことです。動くこと自体は重要ですが、何を成果とするかを決めていないと、改善ができません。
最初の30日間で追うべきは、売上ではなく行動とプロセスです。
最低限、以下の目標数値を決めます。
- 週あたりの初回面談数(目安:5〜10件)
- 週あたりの推薦数(目安:3〜5件)
- 書類通過率(目安:20〜35% ※取り扱う求人の難易度や求職者属性による)
※事業立ち上げ直後の30日間における「初期KPI」の目安です。
キャリアアドバイザーひとりあたり・週単位で設定しています。
この段階のKPIは、売上や決定数を評価するためのものではありません。
面談・推薦・選考の流れが正しく回り始めているか、どこにボトルネックがあるかを把握するための指標です。
③ 求職者集客の導線をつくる
求職者集客の手段自体は多く存在します。代表的なものを挙げると、
- XやnoteなどのSNS/コンテンツ発信
- 既存の人脈、紹介
- スカウト媒体
- 求人広告
などです。ただし、立ち上げ初期にすべてを選択する必要はありません。この時点での集客は目先の面談数を増やすために行うのではなく、これから運用していくための導線づくりとして捉えることがポイントです。
それぞれの集客手法の特徴を理解し、①で設定した領域に合った集客経路を選択することが重要です。
④ スカウト・推薦文のテンプレートを作る
スカウトメールや推薦文を毎回ゼロから考えるのは、立ち上げ期には非効率です。ここで言うテンプレとは、文章を固定することではなく、必ず入れる観点を揃えることを指します。
たとえば、スカウトメールであれば
- なぜこの求職者に連絡しているのか
- 提案したい求人が決まっていれば、その求人を求職者に提案する理由
- 求職者のどのような経歴・スキルを評価しているのか
- 転職支援を通して自社がどのようなメリットを与えられるのか
推薦文であれば
- なぜこの求職者が募集求人に合うと判断したのか
- 求職者のスキルや経験のどこが活かせるのか
- 転職理由や仕事への価値観
- 懸念点とその補足説明
この型があるだけで、推薦の質と再現性は大きく変わります。
⑤ 初回面談のスクリプトを用意する
面談を会話の流れに任せてしまうと、情報は集まっているようで整理されません。最初の7日で、最低限の質問項目と順番を決めておきます。
最低限押さえるのは以下の4点です。
- 転職理由
- 転職で変えたいことの優先順位(給与/環境/人間関係など)
- 妥協できること・できないこと
- 転職活動完了の目標期日
この情報が揃っていない状態では、推薦をしてもミスマッチが起きやすくなります。
ここまでの準備が完了したら、集客した求職者との面談を開始していきます。
8日目以降|活動開始

準備が整ったら、ここから実際に動き始めます。この30日間でやることは、最初の7日で行った準備を元に運用を開始し、「成果を再現するための型」を作ることが目的です。
① 求職者との初回面談を始める
初回面談でのヒアリングは、もっとも重要な起点です。この段階でやるべきことは、「転職を成功させるための前提条件」を整理することにあります。
初回面談では、以下の4つの観点で、順を追ってヒアリングします。
- 目的:今回の転職で何を実現したいのか、仕事や働き方において何を優先したいのか
- 動機:なぜ今転職を考えているのか、現職で感じている不満や不安、将来への期待
- 資産:これまでの職務内容や経験、強みや活かせるスキルは何か
- 計画:いつ頃までに転職したいのか、現実的にどの程度の活動が可能か
初回面談で行ったヒアリング内容は、その後の提案求人の選定、企業への推薦文、面接対策、条件調整、内定承諾に直結する重要な材料となります。
② 求人データベースで「分析」を始める
立ち上げ初期に成果へ直結しやすいのが、求人データベースの活用です。求人開拓を行わなくても、すぐに推薦できる求人にアクセスすることができるため、初期フェーズでも選考を進めやすくなります。
ただし重要なのは、求人を「たくさん扱うこと」ではありません。 見るべきは、どの求人で、どんな人材が選考通過しているのかという傾向を読み解くことです。
なお、求人データベースの契約と初期設定は求職者集客を始める前後で済ませておき、8〜21日目に、求人データベース上での応募を始めながら、成約している選考や企業の判断軸を読み解くことで、
- 面談で聞くべきポイントが明確になる
- 推薦文の精度が上がる
- 無駄な応募・推薦が減る
結果として、少ない面談数でも30日以内に選考が進み始める状態をつくることができます。
意識したいポイントは以下です。
見るべき情報 (1) 内定が出ている人材の共通点
まず確認すべきは、実際に決まっている人材の特徴です。
以下の観点で共通点を整理します。
- 前職の職種・業務内容
- 経験年数のレンジ
- 業界経験の有無
- 転職理由や志向性(読み取れる範囲で)
ここで重要なのは、「ハイスペックかどうか」ではありません。 企業が実際に採用している現実的な人物像をつかみ、設定した自社の領域にマッチするかを判断することです。
見るべき情報 (2) お見送り理由の共通点
次に、選考が進まなかったケースを見ます。
整理するポイントは以下です。
- 必須要件を満たした上でのスキル不足と判断されているのか
- 求職者のスキルと希望条件(年収・勤務地・入社時期)のミスマッチなのか
- 志向性やスタンスのミスマッチなのか
この整理ができると、求職者との面談時に「聞いておくべきこと」「先に伝えるべきこと」が明確になります。
見るべき情報 (3) 求人ごとの「決まりやすさ」
求人の「決まりやすさ」を判断するために注目すべきは以下のポイントです。
- 掲載期間
- 直近(3か月以内程度)で成約が出ているか
- 募集背景
- 採用計画
このような情報を整理することで、条件だけでなく、採用のタイミングも踏まえて「今提案すべき求人」を判断できるようになり、求人提案の精度を上げることができます。
③ 求人開拓を最小単位で始める
求人開拓も、この段階では数を打つフェーズではありません。まずは、自分の事業計画と相性の良い企業に絞り、なぜ連絡しているのかが伝わる営業メールを用意します。
意識すべきは、
- 自分の支援領域と相性が良い企業を選ぶ
- なぜその企業の採用に貢献できるのかを説明できる状態にする
これは企業向けの営業メールだけでなく、求職者へのスカウト文面にも転用できる考え方です。
営業チャネルを最小限に絞り、「自社の言葉」で説明できる状態を作ることが、その後の開拓効率を大きく左右します。
まとめ|最初の30日でつくるべきは「成果を再現するための型」
人材紹介事業の立ち上げから最初の30日間のゴールは、「売上を立てる」ことではなく、初回面談から推薦、選考に進む流れが回り始め、収益化が現実的に見える状態をつくることです。
特に立ち上げ期は、「求職者を増やす」「求人を増やす」よりも、なぜその推薦が通るのか、なぜ落ちたのかを説明できる状態をつくることが重要です。
最初の30日で、
・自分はどんな人材を、どんな企業に紹介するのか
・どんな条件や理由で選考が進むのか
これを言葉で説明できるようになっていれば、次の30日で結果を出す準備は整っています。後編では、この状態を前提に、31〜60日でどのように動けば収益化へ近づけるのかを具体的に解説します。


