パラレルキャリアの魅力とリスクを解説!企業・従業員にとっての新しい働き方とは?

働き方への意識は、終身雇用制から徐々に移行していっていて、今は多様性の時代。様々なキャリアの選択肢があふれています。そんな中、人材紹介会社にとって、求職者に対して最適なキャリア提案を行うことがますます重要になっています。
その中で近年注目を集めているのがパラレルキャリアです。パラレルキャリアは、単に収入源が増えるという意味合いにとどまらず、スキルアップやキャリアの幅を広げる有効な選択肢として注目されています。
特に日本においては、終身雇用制度の崩壊や企業寿命の短縮など、従来の働き方が変わりつつある背景から、多くの企業や従業員がパラレルキャリアの導入を模索しています。
しかし今はまだ、パラレルキャリアとは何か、そして副業との違いを正確に理解している人は少ないかもしれません。
この記事では、人材紹介会社が求職者にベストなキャリア提案をするために、副業やパラレルキャリアの違いやメリットを理解し、どのように提案に活かせるかについて解説します。
パラレルキャリアとは?

副業とパラレルキャリアの定義とは?
副業とパラレルキャリアでは、基本的な意味合いとしては同じで、どちらも複数の職業を持つという意味を持ちます。一方で、その働き方を選ぶ目的や動機は大きく異なります。
副業は、収入を得ることを目的とした追加的な仕事を指すことが一般的です。これは、時間外にアルバイトやフリーランス(業務委託)として働くこと、または本業に関連する業務を別の形で提供することが含まれます。
一方で、パラレルキャリアは収入以外の価値、例えば自己成長や新しいスキルの習得、社会貢献などを目的にしています。つまり収入軸ではなくキャリア軸で考えられる働き方です。
例えば、営業職としてフルタイムで働く人が、週末にNPOの活動をサポートしたり、地域のボランティアに参加するのは典型的なパラレルキャリアの一例です。こうした収入を目的としない活動は「ライフワーク」と呼ばれることもありますが、このような内容も含まれる点で、副業と大きく異なります。
目的・役割の違い
パラレルキャリアと副業の大きな違いは、その目的と役割にあるのはすでに説明しました。では具体的にどういう背景で選ぶ働き方なのかを見ていきましょう。
パラレルキャリアの主な目的は、スキルアップやキャリアアップにあります。個人が自分の専門分野や新しい分野でさらなる成長を追求し、多面的なキャリアの展開を目指す働き方です。個人は本業とは異なる視点や経験を積み、より広範なキャリアの可能性を開くことができるようになることが狙いと言えます。
一方で、副業は主に本業以外で収入を得ることが目的です。目標の収入額あるいは貯蓄額に届かせるために、追加的な収入源を得るためアルバイトや業務委託などで働きます。ただし、収入金額のみを見ているとも限りません。副業を発展させ、いずれ軌道に乗ったら本業化して独立、とキャリアと結び付けて考えるような人もいます。
なぜパラレルキャリアが注目されるのか

パラレルキャリアは、働く人にとってスキルアップやキャリアの幅を広げるチャンスとなります。また、企業にとっても、従業員が多様なスキルや知識を自社の業務に持ち帰ることで、企業の成長に寄与する可能性があります。一方で会社としては転職・流出などリスクも伴うため、慎重に取り組む必要があります。
ここでは、パラレルキャリアが注目される背景とメリットについて詳しく見ていきます。
パラレルキャリアが注目される社会的背景
まず、現代のワークスタイルに対する意識の変化が挙げられます。従来の終身雇用や年功序列といった制度が崩れ、個人がキャリアを自らの手でデザインする必要性が高まっています。その結果、現在のキャリアとは別にもキャリアを積み上げ、選択肢を増やし、思い描くキャリアへの近道を模索する動きが出ているのです。
さらに、企業寿命の短縮も無視できません。経済産業省の報告によれば、現在の企業寿命は20年程度とも言われており、従業員が1つの会社でキャリアを終えることが難しくなっているのです。企業主導のキャリア形成に任せてはいられない、という意識の芽生えも否定できません。
こうして、多くの人がリスクヘッジとして新たなスキルやネットワークを持つことを求め、パラレルキャリアに取り組むケースが増えているのが現状です。
企業がパラレルキャリアに注目する理由
一方で企業がパラレルキャリアに注目するのは、社員の成長とエンゲージメント向上に寄与する点にあります。
会社内での業務・経験では限りがあります。従業員がパラレルキャリアを通じて得た新しいスキルや視点を会社業務に還元すると、投資せずとも得られるメリットを受けられることになります。そのため、パラレルキャリア(ないし副業)の容認の流れが大きくなっているのです。
また多様な経験を積むことで社員のモチベーションが向上し、業務の幅が広がれば、長期的な定着やイノベーション促進にもつながります。
企業ブランディングの強化や、社会貢献活動の一環としてパラレルキャリアを推進する動きも見られています。
労働者としてのパラレルキャリアのメリット
従業員にとってもパラレルキャリアには多くの利点があります。まず、新たな収入源を確保することができ、経済的なリスクヘッジとなります。また、他の業界や分野で活動することで、スキルや知識の多様化が進み、結果としてキャリアアップの機会が広がります。
パラレルキャリアは視野を広げる機会でもあります。異なる分野での経験を通じて、多様な考え方や問題解決のアプローチを学べるため、個人の成長につながります。また、新たな人脈を築くきっかけにもなり、ビジネスチャンスの拡大やキャリアの幅を広げるきっかけとなります。
社内でのキャリアアップにもつながる可能性もあるため、個人の成長の観点からもメリットが多くあるといえるのです。
パラレルキャリアのデメリット・注意点

企業側のリスク
メリットがあれば、当然リスクも存在します。企業側としてのデメリットにはまず、従業員のパフォーマンス低下が挙げられます。従業員が本業と並行して他の活動を行うことで、本業に対する集中力や生活に回せる時間配分が不足する可能性があります。
特に、全員時間管理を適切に行えるかというと、それは難しいことです。従業員が過労に陥ったり、本業に支障が出たりすることが考えられます。結果、企業全体で見てパフォーマンスが低下するリスクが生じるのです。
また、企業情報の流出リスクも考えられます。特に従業員がパラレルキャリアとして「今の会社に貢献できるように近しい業界や職種で働く」という選択をした場合、管理次第では情報が流出し、不利益を被る可能性があります。
そのため、勤務先として自社と同じ業界や職種は制限するなどの措置が必要になってきます。加えて、個人情報を多く取り扱う業務の場合は個人情報の流出リスクも出てくるため、情報管理と取扱リスクに関しての周知・教育が重要になってきます。
従業員側のリスク
従業員も、パラレルキャリアのデメリットを押さえておくのがよいでしょう。まず、時間管理やメンタル・フィジカルの負担が増すことが大きなリスクです。
パラレルキャリアに過度にのめり込んでしまうと、本業に悪影響を及ぼす可能性もあります。特に、体調を崩したり、家族や友人との時間を犠牲にしてしまうことは避けるべきです。そのため、本業とのバランスを保ちながら、無理のない範囲で取り組むことが重要です。
パラレルキャリアを始める際の準備と注意点
事前準備
パラレルキャリアに戦略的に取り組むためには、事前準備が必要です。まず、目標設定を行いましょう。何を達成したいのか、どのようなスキルや経験を得たいのかを明確にします。
例えば、社会貢献を目指すのか、それとも新たな分野でのスキルアップを目指すのかをはっきりさせることで、後の行動指針となります。
次に、企業の就業規則の確認です。パラレルキャリアを始める際、勤務先の企業が副業やパラレルキャリアを許可しているかどうかは重要なポイントです。
特に就業規則には、副業に対する制限が記載されていることがあります。要件は事前に確認し、場合によっては上司や人事部と相談する必要があります。企業によっては事前許可が必要な場合もありますので、このステップを軽視してはいけません。
最後に、実現可能な環境作りを行いましょう。パラレルキャリアを成功させるには、時間管理や生活スタイルの見直しが欠かせません。本業とのバランスを取るために、日々のスケジュールを効率的に管理し、家族や友人との時間も考慮したうえで、無理のない形での活動を計画することが重要です。
例えば、週に何時間をパラレルキャリアに充てるのか、また休息をしっかりと確保する方法も考えるべきです。
パラレルキャリアの未来と企業の対応

企業がパラレルキャリアを推進するためのステップ
パラレルキャリアを企業側で推進するためには、従業員が安心して活動できる環境を整えることが必要です。具体的には、副業やパラレルキャリアに関する柔軟な規定を設け、従業員が自由に活動できるようにサポートする体制を整えることが大切です。従業員が社外で得たスキルや知識を企業に還元できる環境を作ることで、結果的に企業も恩恵を受けることができます。
また、企業は従業員に対してパラレルキャリアに関する情報提供やサポートプログラムを実施することも検討するべきです。従業員が自分に合ったパラレルキャリアを選択し、効果的にキャリアを構築できるような支援を行うことで、企業自体の価値も向上します。
パラレルキャリアの今後
今後も、パラレルキャリアはますます広がりを見せると考えられます。企業や従業員が共に利益を得られる働き方として、これからのキャリアの形を再定義する要素の一つとなりうるためです。特に、人生100年時代と呼ばれる長寿社会において、個人が生涯を通じて自分のキャリアを充実させるために、パラレルキャリアは非常に有効な手段と言えるでしょう。
また、技術の進化やリモートワークの普及により、地理的な制約が減り、さまざまな活動に取り組むことが容易になっています。これにより、個人が自分の時間を柔軟に使いながら、多様な経験を積み、スキルを高めていくことがますます重要になるでしょう。
まとめ
パラレルキャリアは、従業員が本業と並行して新たな活動に取り組むことで、スキルアップや自己成長を目指す働き方です。副業とは異なり、必ずしも収入を目的とせず、自己実現や社会貢献を目的とすることも多く、幅広い可能性があります。
一方で、時間管理やメンタル・フィジカルヘルスの管理が不可欠であり、企業との調整も必要です。また、企業にとっても、従業員がパラレルキャリアを通じて得たスキルを還元できる環境を整えることが求められます。
パラレルキャリアの普及は、個人と企業双方に新たな成長の機会をもたらします。今後のキャリアを考える際には、パラレルキャリアという選択肢を視野に入れ、柔軟な働き方を模索することが重要です。