内定獲得までのスケジュールを管理できれば、求職者の転職までの期待値とやる気、スピード感を維持しつつ内定承諾までをスムーズに進めていくことができます。人材紹介会社で求職者対応をする方は、内定保留期間について熟知して、それをベースにした計画を立てていくのも良いでしょう。
この記事では、内定保留期間に関する基本的な知識から、新卒者と既卒者それぞれに対する戦略、さらにはトラブル対処法まで、人材紹介会社で働く人がおさえておくべき情報を詳しく解説します。
内定保留期間の基本理解
内定保留期間を知っておけば、内定の獲得数を維持しつつ求職者がベストな転職先を選べるようサポートしていけます。ここでは、内定保留の定義や目的、一般的な期間の目安、そして内定保留が企業と求職者に与える影響について詳しく解説します。
内定保留とは? 定義と目的
内定保留とは、企業から内定を受けた求職者が、すぐに承諾や辞退の返事をせず、一定期間の猶予を求める行為を指します。
内定保留の主な目的は、求職者が他の企業の選考結果を待つ時間を確保したり、家族と相談する時間を設けたりすることです。人材紹介会社にとっては、求職者の希望を尊重しつつ、採用企業の期待にも応える必要があるため、適切なバランスを取ることが求められます。
一般的な内定保留期間の目安
内定保留期間の長さは、業界や企業規模、採用の時期によって異なりますが、一般的には1週間から2週間程度が目安とされています。ただし、大手企業や人気企業では、より短い期間を設定している場合もあります。
人材紹介会社としては、選考が進んでいる会社の採用スピードや内定保留期間を把握しつつ、スケジュール管理をしていくことが求められます。
内定保留が企業と求職者に与える影響
内定保留は、企業と求職者の双方に影響を与えます。企業側にとっては、希望の日程より遅れると採用計画や他の求職者への対応に影響が出る可能性があります。一方、求職者にとっては、じっくりと意思決定ができるメリットがある反面、企業からの印象が悪くなるリスクもあります。
そのため人材紹介会社は、全体的なバランスを見ながら適切な提案や交渉をしていく必要が生じることがあります。
転職者向けの内定保留期間と戦略
転職市場では、新卒市場と比べて通年採用が一般的です。多くの場合、企業は即戦力となる人材を求めているため、内定保留に対してより慎重な姿勢を取ることがあります。
転職活動をしている人に向けた内定保留の戦略は、その人の状況や現職との兼ね合いなど、関係するスケジュールや都合を総合的に把握しながら進めなくてはなりません。
ここでは、転職市場の特性を踏まえた内定保留の位置づけ、現職との兼ね合いを考慮した対応、そして経験やスキルレベルに応じた戦略の違いについて詳しく解説します。
現職との兼ね合いを考慮した対応
転職活動をしている人にとって、現職との兼ね合いは非常に重要な問題です。内定保留中に退職の意思を現職に伝えるべきか、あるいは内定承諾してから伝えるべきか、退職日をいつにするかなど、複雑な判断が求められます。
人材紹介会社は、求職者の現在の職場環境や、業界の慣習などを考慮しながら、適切なアドバイスを提供することが重要です。例えば、繁忙期を避けて退職時期を調整したり、引き継ぎ期間を確保したりするなどを提案することができます。
経験やスキルレベルに応じた戦略の違い
経験年数やスキルレベルによって、内定保留に対する企業の対応が大きく異なることがあります。例えば、高度なスキルを持つ専門職の場合、企業側がより柔軟な対応を示す可能性が高くなります。一方、経験の浅い転職者の場合、企業側がより迅速な決断を求めることもあります。
人材紹介会社は、求職者の経験やスキルを正確に把握したうえで、求職者のキャリアプランに基づいてた長期的視点からアドバイスを提供することが求められます。
新卒者向けの内定保留期間戦略
新卒採用における内定保留は、転職者採用の場合と大きく異なります。ここでは、新卒者に特化した内定保留期間の戦略について、就活スケジュールとの関連性や、時期別の対応方法、さらには新卒特有の考慮事項について詳しく紹介します。
新卒採用スケジュールと内定保留の関係
新卒採用は、一般的に年間スケジュールが決まっています。3月の就活解禁から、6月の選考開始、10月の内定式まで、時期ごとに企業の行うべき内容が決まっていますが、既存のスケジュールにとらわれない企業もあります。
人材紹介会社は、この全体スケジュールを念頭に置いて対応していかなくてはなりません。例えば、6月の選考解禁直後は企業側も余裕があるため、比較的長めの保留期間を認めてもらえる可能性が高くなります。
時期別の内定保留に関する対応方法(早期選考、本選考期、後期選考)
3月以前:早期選考
この時期の内定は主にベンチャー企業や外資系企業から出されることが多いです。外資系企業は経団連に加入しておらず一般的な就活ルールに縛られないことから早く内定が出ます。また、ベンチャーが早めのインターンを経由して選考を進めていく場合も早く内定につながっていきます。
この時期は、まだ就活の解禁前から直後と機関の余裕があることから、比較的長期の保留が認められやすく、6月の本選考まで待ってもらえる可能性があります。
4月〜8月:本選考期
一般的な就活解禁後、選考が本格的に開始していく6月から選考が本格化していく8月ごろまでは、最も多くの企業が選考を行う時期です。選考開始の6月以降に一斉に筆記試験や面接などの選考が解禁されます。早ければ6月ごろから内々定が出始め、学生の間でも焦りを感じる人が出始める時期です。
内定保留の期間は通常1週間程度ですが、企業によっては2週間まで認める場合もあります。
9月以降:後期選考
この時期は企業側も採用活動の終盤を迎えており、内定保留の期間は短くなる傾向にあります。多くの場合、3日から1週間程度です。人材紹介会社は求職者に対し、迅速な意思決定の重要性を説明し、サポートする必要があります。
新卒特有の考慮事項
新卒の就活には、業界団体が定める就活ルールがあります。例えば、経団連の指針に従う企業では、事前に内々定は出していても、正式に内定を出すのは10月1日以降となります。
また、学生は就活と大学生活の両立で壁に直面することがあります。内定保留期間中も授業や卒業論文などの学業があるため、心理的な負担が大きくなる可能性があります。人材紹介会社は求職者の状況に対して理解を示し、精神的なサポートも含めた総合的な支援を行うことがグリップのために重要です。
内定保留期間を延長する際の人材紹介会社の役割
内定承諾までのスケジュールをコントロールしていても、様々な都合でどうしても内定保留期間の延長が必要になることがあります。
ここでは、内定保留期間の延長が必要な状況の見極め方、企業との交渉方法、延長時の求職者へのアドバイスについて詳しく解説します。
延長が必要な状況の見極め
内定保留期間の延長を企業に交渉する前に、求職者に詳しく事情を聴いて本当に延長する必要があるのかをまず見極めて判断しましょう。
延長が必要となる可能性があるのは、例えば以下のような状況です。
- 他社の選考進捗: 求職者が志望度の高い他社の最終面接を控えている場合
- 家族の事情: 転居を伴う転職など、家族との相談に時間を要する場合
- 現職の状況: 現在の仕事の繁忙期と重なり、十分な検討時間が取れない場合
- 健康上の理由: 求職者が一時的な体調不良で意思決定が難しい場合
人材紹介会社は求職者に事情に寄り添いつつも、延長の必要性とその妥当性を見極める必要があります。時にはヒアリングを超えて説得をしなくてはならないかもしれません。
内定保留期間の延長によるメリットとデメリットを冷静に分析し、時にはその分析過程を求職者にも共有しつつ、求職者にとって最善の選択をサポートすることが重要です。
採用企業への交渉方法とポイント
内定保留期間の延長を採用企業に交渉する際は、以下のポイントをおさえておくと理解を得やすくなります。ただし、どんなに理解を得られたとしても企業の事情によっては延長が難しい場合もあるため、その可能性も考慮に入れておく必要があります。
- 事前準備: 延長の理由を求職者と整理し、具体的な期間を設定します。また、延長によるメリットを企業視点で考えておきます。
- 誠実な説明: 延長が必要な理由を誠実に説明し、企業側の理解を得られるよう努めます。なるべく早いタイミングで説明することで考慮の余地が生まれます。
- 代替案の提示: 延長期間中のやりとりや追加面談など、企業側にもメリットのある提案をします。
延長時の求職者へのアドバイス
内定保留期間が交渉の末に延長された場合、求職者に適切な対応をしてもらえるよう促していきます。新卒と既卒で状況は異なってくるので、状況に合わせてアドバイスしていきましょう。
新卒者へのアドバイス:
- 時間の有効活用: 延長期間を活用して、企業研究や業界研究を深めるよう促します。
- 他社選考との両立: 他社の選考も並行して進める場合、かならず延長した内定保留期間の期限内に収まるように注意してもらいます。
- 定期的な状況報告: 延長を認めてくれた企業に対し、定期的に状況報告をするよう促します。
既卒者へのアドバイス:
- 現職への配慮: 現在の仕事に支障が出ないよう、時間管理を促します。
- キャリアプランの再確認: 延長期間を利用して、長期的なキャリアプランを再確認して後悔しない判断ができるよう自己分析してもらいます。
- 退職日調整:社会保険や残有給、既定の退職最短日など、内定承諾からのスケジュールについて明確にできるよう情報を共有してもらいます。
人材紹介会社は、延長期間中も定期的にフォローアップを行い、求職者の状況や気持ちの変化を把握することがグリップに重要です。
内定保留に関するトラブル対処法
内定保留に関連して、様々なトラブルが発生する可能性があります。ここでは、主な3つのトラブルシナリオとその対処法について詳しく解説します。
内定保留を断られた場合の対応
内定保留の要請を企業側が断ってきた場合、まずは企業側が内定保留を断った理由を丁寧に確認します。採用スケジュールの都合なのか、求職者への不信感なのか、理由によって対応が変わってきます。
状況を確認したら代替案を提示します。例えば、保留期間を短縮する、追加の企業訪問を提案するなど、企業側の懸念を解消できるような代替案を提示します。
企業側との延長交渉が終われば、そのまま求職者との調整に入ります。 企業側の立場を求職者に説明し、今後の方針として即座に決断するか、辞退するか、短い期間で合意するかなど、選択肢を提示します。いずれにしても求職者にとって最適な選択ができるように、フォローしていくのが重要です。
オワハラ(就活終われハラスメント)への対処
オワハラとは、企業が学生に対して就活を終えるよう圧力をかけることを指します。オワハラが行われたことは求職者から聞くことになりますが、その場合まず詳細な状況を聞き取り、どのような形でオワハラが行われたのかを確認します。また、オワハラが違法行為であることを求職者に説明し、必要に応じてアドバイスを提供します。
オワハラが確認された場合、求職者のケアを終えてから、企業側との対話を行います。企業の人事部門や上層部と対話し、状況の共有と改善を求めることになるでしょう。
オワハラをされた求職者に対しては、本人の意向を尊重し、他の企業の紹介や、就活の一時中断など、求職者にとって最善の選択肢を提案します。
複数内定保持者へのアドバイス
複数の内定を保持している求職者で、どこにするか決めかねている場合も対応が求められます。第三者の目線として、求職者自身の希望と考えを再度ヒアリング・整理して、最善の選択肢をあらためて提示できるようにしましょう。
判断軸がぶれているなら、キャリアビジョンや人生設計に立ち戻り、優先順位を付けつつ内定を取った企業の内定条件を整理し比較検討します。辞退する際の伝え方などをアドバイスすることもあるでしょう。