求職者にとって魅力ある求人票を作成し、有力な人材を集めるためには、求職者にどう見られたいか、どんな求職者を欲しいのか、どんな仕事をしてほしいかなどを明確に打ち出していく必要があります。
この記事では、求人票の書き方で課題を抱えている方、特に人材紹介会社のRAの方向けに、応募を集めるためのコツや表現の注意点などを解説します。
求人票とは?
求人票とは、採用したい企業が求人情報を掲載する際に利用するフォーマットのことです。また、人材紹介会社も採用企業の代わりに求人票を作成し、応募者を募ることがあります。
求人票はフォーマットが全て統一されているわけではありません。ハローワークや求人サイトなど、それぞれで指定のフォーマットがあり、それにあわせて項目を記載します。
そのため、完璧な求人票の型はどこにもありません。同じ業種や職種の求人票をまねしたり、自社で求人票を都度変更して様子を見たりして自社での最適解を探ることになるでしょう。
人材紹介会社の場合、営業担当者(RA)が取引先企業から得た求人情報を、求人票の形に整理して求職者に提示します。どんな人にどんな仕事をしてもらいたいか、どんな人が会社にあっているか、どんな労働条件になるかなど、詳しく聞き取りを行います。そのうえで、希望に合った人材を確保できるよう、ミスマッチを起こさない求人票として落とし込んでいきます。
求人票は、求職者にとって企業や仕事の内容を知る重要な情報源です。会社の知名度や規模感にもよりますが、まずは求人票の情報量や書き方が、応募を左右するといっても過言ではありません。
求人票でうまく求職者の応募が得られない理由
なぜ作った求人票で思うような求職者を得られないのか、求人票の内容を再度確認してみましょう。内容や書き方が、希望する人材像と合っていないかもしれません。
既存の求人票を見直す際にチェックしておきたい項目と、改善のコツを紹介します。
仕事内容がわかりにくい
そもそもそのポジションでどんな仕事をすることになるか、読む人がイメージできていない可能性があります。たとえば事務であればどんな仕事かわかるだろう、と割愛してしまう部分もあるかもしれませんが、仕事内容は個社ごとに異なることもあります。詳細に書いてあればあるほど実際のイメージもつかみやすくなるので、冗長にならない程度に詳しく書いていきましょう。
具体的な業務内容を記載することで、業務のイメージが持てるだけでなく、見る人にとって自分がその業務をするメリットやデメリット、これまでの経験やスキルを活かせるか適性を判断する材料になります。
また、未経験や異業種からの転職を可能としている場合、見る人が内容を理解しきれていないケースも考えられます。業界用語や社内用語が多用されていないか、経験者にしかわからない抽象的な表現になっていないか確認しましょう。
労働条件が不明確
給与や勤務時間、休日などの労働条件が明確に記載する必要があります。仕事内容や将来的なビジョンがマッチしていても、その報酬や働き方がイメージできなければ応募と面接の手間を惜しむでしょう。
子育てフレンドリーな体制があるか、スキルアップや健康維持の支援はあるか、在宅勤務やフレックス勤務といった働き方の選択肢があるか、時短勤務を選べるかなど、福利厚生や勤労体制でどんなメリットを従業員に提供しているのかは会社を選ぶ理由にもなります。
一方で、「月1回部署で飲み会があります」「毎月約35時間の残業があります」など、人によってはマイナスイメージになる会社のカルチャーもあります。カルチャーマッチの観点からは正確に記載することが早期離職を防ぐポイントにもなります。ただ、自社ではよいこととされている文化をネガティブなイメージで受け取る人がいることは理解しておきましょう。
魅力が伝わっていない
企業の強みや仕事のやりがい、成長機会など、求職者が応募したくなるような魅力が十分に伝わっていないと、応募にはつながりにくいでしょう。
まずは、来てほしい能力を持つ人材が、どんな環境を魅力に思うのか分析しましょう。成長イメージが持てるよう、キャリアパスの例を出すことも、実際の社員の働き方を紹介することもできます。「この会社で働くメリットはこれです」と、あえてわかりやすく提示する会社もあります。
ターゲットが適切に絞れていない
どんな人に来てもらいたいかを明確に打ち出せていないと、本当に来てほしい人こそにアプローチできません。たとえば必須項目としているスキルや経験は本当にどうしても必要なのか、十分条件(歓迎要件)ではないのかを精査します。必須と掲げていることが本当は必須でないなら、有力な候補者をその時点で振るい落としてしまっていることになります。
あるいは、「こういう人に来てほしい」と性格面や人物像を箇条書きで打ち出すのもよいでしょう。
求人票に必ず記載しなくてはならない項目
求人票の必須記載項目は、職業安定法施行規則第4条の2に定められています。求人票には以下の項目を必ず記載しましょう。
- 仕事の内容(例:営業)
- 契約期間(例:期間の定めなし)
- 試用期間(例:6か月)
- 就業場所(例:本社 転勤なし)
- 就業時間(例:10:00-19:00)
- 休憩時間(例:12:00-13:00)
- 休日(例:完全週休二日制)
- 時間外労働(例:時間外労働あり(月平均20時間))
- 賃金(例:月給28万円)
- 加入保険(例:雇用保険、労災保険、厚生年金、健康保険)
- 募集者の氏名又は名称
- 派遣労働者の場合は、雇用形態を明記(例:雇用形態:派遣労働者)
- 受動喫煙防止措置の状況
ただし、職業安定法施行規則の改正により、2025年4月1日からは労働条件として以下の内容も明記しなくてはなりません。
1 従事すべき業務の変更の範囲
2 就業の場所の変更の範囲
3 有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間又は更新回数の上限を含む)
求人票に書いてはならない内容
一方で、求人票には法律で記載が禁止されていることがあります。表現的な部分でも、細かに禁止事項に該当していないか確認するようにしましょう。
差別的な表現
性別、年齢、国籍など、差別的な内容を求人の条件にすることは法律で禁止されています。人材紹介会社としては、採用企業の話から希望条件も詳しく聞いているかもしれませんが、差別的ととられかねない情報を求人票に記載するのはいけません。具体的にどういった表現が禁止されているのか、具体例と合わせて紹介します。
①性差別表現の禁止
主婦、ウエイター、看護婦などの、性役割を意識させる言い回しは避けて別の表現に変更しましょう。性別の限定表現ともとられかねません。この場合は主婦(夫)、ホールスタッフ、看護師などに変更可能です。
「若手歓迎」「女性歓迎」「男性はマネージャー候補、女性は事務のみ募集)など、年齢や性別で採用要件、待遇や条件が異なることを記載するのもNGです。
どうしても女性あるいは男性でないと任せられない職種に関しては、例外として「適用除外職種」になることもありますが、きわめてレアケースです。会社の事情や配置バランスなどでは基本的に考慮されません。
②年齢差別表現の禁止
年齢で採用条件に差をつけることや、「○○歳まで」と限定することも禁止されています。ただし、「長期的キャリアの形成のため」あるいは深夜業務で法定上働ける年齢が制限される場合、定年の考慮のためなど、限定的に認められることがあります。
それでも、「若い人だと経験が浅いから」「若いとすぐ転職するから」「高齢だと体力がないから」などの理由で年齢条件は設けられません。経験的な問題であれば、必須要件として職務経験で求めることができ、また体力的な問題は業務内容で具体的に体力や筋力を使う内容を示すことができます。
詳しい例外事由は労働施策総合推進法で決められていて、以下の通りです。厚生労働省のページでもQ&A方式などで詳しい事例について確認できます。
◆ 例外となる場合 ◆
例外事由 1号:定年年齢を上限として、その上限年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
例外事由 2号:労働基準法その他の法令の規定により年齢制限が設けられている場合
例外事由 3号 イ:長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
例外事由 3号 ロ:技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、 期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
例外事由 3号 ハ:芸術・芸能の分野における表現の真実性などの要請がある場合 p.11
例外事由 3号 ニ:60歳以上の高年齢者、就職氷河期世代(昭和43年4月2日から昭和63年4月1日までに生まれた者)または特定の年齢層の雇用を促進する施策(国の施策を活用しようとする場合に限る)の対象となる者に限定して募集・採用する場合
参考:厚生労働省|「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?」事業主の皆様へ(PDF)
虚偽の内容
労働条件や仕事内容について、事実と異なる情報を記載してはいけません。実際は残業時間が月30時間ほどなのに月10時間と書いてしまったり、実際の賃金予定よりも高い価格帯を掲げていたりなどは、禁止事項にあたるだけでなく入社前後のトラブルにつながりかねません。給料想定幅を広げすぎるのも、ギャップが生まれる要因になります。
正しく誤解を生む余地がない表現と内容を心がけましょう。
曖昧な表現
「高収入」「やりがいあり」など、あいまいで理解に幅が出るような言葉は使わないようにしましょう。具体的な数字を示すなど、求職者が誤解しないような表現を心がけます。
求人票のレベルを一段上げて魅力を出すために
求人票を見た求職者が、より魅力的に感じるようにするためには、テクニカル面で表現の工夫を行うだけでなく、その他で工夫してレベルを引き上げることもできます。
求人票のフォーマットを活用する
求職者に受けがいいキャッチフレーズや情報の順番、文字の大きさ、写真の配置など、ベストなフォーマットをあらかじめ準備しておくことで工数削減になります。工数削減以外にも、これまでのデータや経験に基づき最適化しやすいこともメリットです。
読みやすさ、魅力の伝えやすさ、ターゲットとの親和性などを含めていくつかパターン化しておくと良いでしょう。
テンプレートとして配布されているものをまずは使ってみて、そこで効果を見ながら変更を加えていくというやり方も効果的です。
第三者の目線でチェックする
さらに、実際に求人票を書き終えたら、第三者の目線で内容をチェックしてみるのがおすすめです。同僚にレビューを依頼したり、できれば求職者の視点からアドバイスできる人に見てもらいましょう。書ききれていない点はないか、魅力が伝わる表現になっているか、ターゲットと求人票で求めている人物像が一致しているかなど、見る箇所はいくつもあります。
改善点があれば修正を加えて、少しでも多くの求職者に響く求人票を目指しましょう。
まとめ
人材紹介会社のRAの方にとって、求人票の作成は重要な仕事の一つです。成果を最大化するためにも、求職者の応募意思を獲得しやすくなる求人票を書くためには、法律上の項目を満たしつつも、ターゲット理解を深めて表現を磨いていく必要があります。
求職者を引き付ける求人票ができれば、充実した面談や面接、ひいては成約数の向上にもつながるはずです。求人票の書き方の上達を目指しているなら、circusAGENTのセミナーやノウハウ資料もぜひご活用ください。